
愛知県豊橋市にある日東電工株式会社 豊橋事業所。約3,000人が働くこの事業所には、「OASIS」と「Century」という2つの社員食堂があり、利用者はおよそ1,100人にのぼります。
かつては横一列に並び、同じ方向を向いて“黙々と食べるだけ”の空間だった食堂は、今回のリニューアルによって、緑と木目に包まれたカフェのような空間へと生まれ変わりました。
リニューアルを推進したのは、会社側と労働組合側、製造部門と間接部門の代表などで構成されたタスクフォースです。プロジェクトに携わった3名に、リニューアルの背景と空間づくりのこだわりを伺いました。

OASISの窓からはのどかな田んぼの景色が広がっている
目次
- 黙々と10分で食べる場所だった──リニューアル前の食堂が抱えていた課題
- 目指したのは「リフレッシュ」「コミュニケーション」、そして食事以外の使い方
- アンケートとキーワード分析で、従業員の声を形に
- シンボルツリーとグリーンウォール──それぞれの食堂の「象徴」
- 「QUICK」「LONG」「USUALLY」──多様な働き方に合わせた席づくり
- 後編へ続く
黙々と10分で食べる場所だった──リニューアル前の食堂が抱えていた課題
――本日はよろしくお願いします。
まずは食堂リニューアルの背景と、当時感じていた課題をお聞かせください。
戸澤:以前の食堂は、食事を楽しむ空間というより「食べる作業」をする空間になっていました。席は横一列に並び、全員が前を向いて座る形です。コロナ禍で向かい合って食べることもなくなり、窓の外の田んぼを眺めながら10分ほどで食べ終える、というのが主流だったと思います。
コロナ禍の間はずっとパーティションを置いていて、それを取り払ってもどこか暗い印象が残っていました。そこで食堂の運営会社の変更とあわせて3年計画を立て、新しい福利厚生施設を提供し、従業員により満足してもらえるよう動き始めました。
中川原:2〜3年ほど前に食堂運営会社を変更し、メニューのマンネリ化には手を打ちました。ただ、食堂そのものの環境については、大きな変化がない状態が続いていました。
そこで食堂リニューアルの検討を進めたのですが、実は当初、私の周りでは「わざわざ変える必要はないのでは」という意見のほうが多かったんです。 ところが実際にリニューアルをしてみると非常に好評で、「変えてよかった」という声が多数を占めました。

――どのような点が好評だったのでしょうか。
中川原:モダンな空間になったことでしょうね。「まるで丸の内のカフェにいるようだ」という声もありました。以前はあっさりした印象でしたが、都心にあるような洗練された食堂になったと思います。

目指したのは「リフレッシュ」「コミュニケーション」、そして食事以外の使い方
――リニューアルの目的を教えてください。
戸澤:目的は従業員の福利厚生の充実です。具体的には、リフレッシュできる空間、そしてコミュニケーションの場として活用してもらうことを目指しました。
加えて食事のためだけの場所ではなく、従業員一人ひとりが食事以外での使い方も考えながら、ワークスペースや面談、相談の場としても活用してもらいたいと考えていました。事業所内は会議室が多くないこともあり、打ち合わせ場所の確保という狙いもありました。
――利用者数はどのくらいですか。
戸澤:全従業員はおよそ3,000人ですが、夜勤などもあるため、食堂の利用者は約1,100人で推移しています。
アンケートとキーワード分析で、従業員の声を形に
――リニューアルに際して、事前に従業員の方にアンケートを取られたそうですね。
戸澤:3年計画の根拠とするため、食堂だけでなくウォーターサーバーや休憩室、トイレも含めた福利厚生施設の満足度調査アンケートを実施しました。全従業員に依頼し、約1,000件の回答を集めることができました。
アンケートでは食堂についてはメニューのマンネリ化を指摘する声が多く、「食べたいものがない」という意見も見られました。
西垣:その他動線をスムーズにしてほしいという声が約4割、テーブル周りのスペースにゆとりがほしいという声が約2割ありました。やはり以前の食堂は使い勝手が良くないと従業員も感じていたようです。

――プロジェクトはどのような体制で進めたのですか。
戸澤:まずタスクフォースを立ち上げました。会社側と労働組合側の代表に加え、女性活躍の観点から女性メンバー、さらに製造部門と間接部門それぞれの代表に入ってもらい、福利厚生担当だった私が事務局を務めました。

戸澤:タスクフォースでは、食堂のコンセプトについて何度も意見を出し合い、キーワードをメンバーに入力してもらいました。
その後、出てきたキーワードを単語ごとに集計・分析したところ、「緑がいい」「自然系がいい」「リラックスしたい」といったワードが特に多く挙がっていることがわかったんです。
その結果を中川原さんに共有し、清和ビジネスさんと調整しながらコンセプトづくりを進めてもらいました。
シンボルツリーとグリーンウォール──それぞれの食堂の「象徴」
――空間づくりで特に意識されたポイントを教えてください。
戸澤:OASISの象徴として据えたシンボルツリーは、タスクフォースを立ち上げた当初から「絶対に作ろう」と決めていたものです。コンセプトを固める段階で緑を求める声が多かったことから、食堂のランドマークとして据えました。

食堂なので、虫などの衛生面を考慮してフェイクグリーンを採用しています。
このツリーがあることで食堂全体にリラックスしたイメージをもたらすことができるため、利用者にも好評です。
もう1つの食堂Centuryにも同じような木を置く予定でしたが、スペースの制約で難しく、私たち3人で代案を出し合ってグリーンウォールに変更しました。壁面にはCenturyの文字が浮かび上がるようにしています。タスクフォースにも了承を得たうえで、この形になりました。
このグリーンウォールはスペースを取らずに緑を感じてもらう演出ができるので、導入して良かったです。休憩をしにCenturyに来る従業員も、自然とこのグリーンウォールに向かって座っている人が多い気がします(笑)。

「QUICK」「LONG」「USUALLY」──多様な働き方に合わせた席づくり
従業員によっても食事の時間の使い方はさまざまです。それぞれの用途にあわせて利用できるように、両食堂は、すばやく食事を済ませる「QUICK」、ゆっくり食事を楽しむ「LONG」、いつもの時間を過ごす「USUALLY」の3ゾーンで構成され、ファミレスソファやハイカウンター、シンボルテーブルなど多彩な席が配置されています。
――席の種類が豊富ですが、どのような狙いがあるのでしょうか。
戸澤:豊橋事業所には7〜8社のグループ会社の方々も働いていて、働き方やシフトはさまざまです。仲間と時間を合わせて食事ができない方も多いので、一人でさっと食べられるカウンター席はしっかり確保しました。

戸澤:食堂の利用用途もさまざまです。すべての人に対して均一なサービスや空間を提供するのではなく、各人にとって使い勝手の良い食堂づくりを目指しました。
ソファ席は、休憩室だけでは仮眠の場所が足りない夜勤の方の休息スペースとしても使われています。休憩したりリラックスしたりできる場所を提供したいという狙いがあったので、ソファ席を導入したのは大正解でした。

後編へ続く
後編では、課題だった動線の改善策、リニューアル後に従業員の行動に生まれた変化、イベントや交流の場としての活用、そしてこれから食堂リニューアルに取り組む担当者へのメッセージをお届けします。
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