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【前編】「130年前、松竹もスタートアップだった」──エンタメ特化インキュベーションスタジオEIGHTが体現する、老舗CVCの挑戦

高輪ゲートウェイ駅直結のTHE LINKPILLAR 1 SOUTH 8階に、松竹グループのCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)である松竹ベンチャーズ株式会社が運営するインキュベーションスタジオ「EIGHT」があります。歌舞伎の幕の色に彩られた会議室、歌舞伎座舞台㈱専属スタッフが描いた壁画、回り舞台をモチーフにした円形スペースなど、エンタメの「文脈」が空間全体に宿るオフィスには、開設から数カ月で100社超のスタートアップが集まりました。

なぜ今、松竹がインキュベーションに取り組むのでしょうか。そして何がスタートアップを惹きつけているのでしょうか。代表取締役社長の井上貴弘氏、専務執行役員の森本氏、取締役常務執行役員森川氏(以下敬称略)の3名にインタビューしました。

松竹ベンチャーズ株式会社 代表取締役社長 井上貴弘氏(写真中央) / 森本氏(写真右) / 森川氏(写真左) エントランスには歌舞伎舞台の背景画と同じ手法で制作した絵が印象的に描かれている

目次

映画・演劇・不動産だけでいいのか──コロナ前から始まっていた危機感

――本日はよろしくお願いします。まずはEIGHTの設立背景からお聞かせください。

井上:コロナの前から、松竹では漠然とした危機感を持っていました。松竹の主な事業は映画・演劇・不動産で、ほぼすべてが日本国内向けのビジネスです。そのため、日本の人口動態を鑑みれば、将来的に市場が縮小していくだろうと考えていました。

「このままのやり方でいいのか」という問いに対して注目したのが、当時少しずつ言葉として広まっていた「オープンイノベーション」という考え方です。松竹は創業から130年、多くの大企業と連携してきた歴史がありました。しかしながら、スタートアップ企業とはまったく接点がありませんでした。

新しいサービスや技術、革新的なものを生み出すのはスタートアップであり、そこと付き合わないことには新しい事業は生まれないと考えるようになりました。

2017年頃から取り組みをスタートし、まずはベンチャーキャピタルファンドへの出資し、そこへ若手社員を出向させることで、スタートアップ業界を肌で学ばせました。2019年には映像・演劇・不動産・管理の4本部に加え、新規事業専門の「事業開発本部」を新設。そして同年、松竹ベンチャーズの母体となる組織を立ち上げました。

ところが、その矢先にコロナが直撃します。劇場も映画館もクローズを余儀なくされ、創業以来最大の赤字という未曾有の危機に転じました。新規事業どころではない状況が続き、松竹ベンチャーズの正式設立は2022年7月まで延びることになりました。

「130年前、松竹もスタートアップだった」──EIGHTが生まれた必然

――松竹ベンチャーズ設立後、なぜインキュベーション施設という形に至ったのでしょうか。

井上:松竹ベンチャーズ設立後は、スタートアップへの投資や共創に向けた実証実験をはじめ、事業開発を行ってきました。ただ、本当に新規事業を推進するためには、すでにプロダクトが育った「アーリー期」の企業だけでなく、もっと若い──これから起業しようとしている人、起業したばかりの人──そういった段階の人たちとも一緒にやる必要があると気づきました。

EIGHTのミッションと名称には、松竹ベンチャーズのミッションである「この国の娯楽を、進める。」が直結しています。

スタートアップとともにチャレンジし、新しい娯楽を創り出していくこと。振り返れば松竹の創業者も、歌舞伎関連の物販から興行に入り、劇場をM&Aで次々と買収し、当時は想像もされなかった「映画」という外来文化にいち早く参入した、相当なリスクを取り続けた人たちです。「130年前、松竹もスタートアップだった」のです。

今、日本のコンテンツへの世界からの注目は過去最高水準にあります。そんな時代に、エンタメ企業として会社の事業の柱をもう一本作ること、そして娯楽を進めることの両方を実現するために、インキュベーション拠点を設けることは必然の選択でした。

JR東日本との資本業務提携が生んだ、高輪ゲートウェイという立地

――高輪ゲートウェイという立地はどのように決まったのですか。

井上:約2年前、JR東日本様と資本業務提携を結んだことが起点です。それ以来、高輪ゲートウェイシティ内のMoN Takanawaでの講談や歌舞伎の公演など、さまざまなプロジェクトを進めています。

JR東日本様が同エリアに構築したインキュベーション施設「LiSH」は非常に大規模なもので、環境・モビリティ・ヘルスケアの3分野を軸に据えています。私たちのエンタメ特化という方向性とは重複せず、むしろ補完し合える関係だと感じました。

ロケーションとしての強みも大きかったです。高輪ゲートウェイ駅直結という利便性に加え、品川から東海道新幹線へのアクセスが非常に近く、また羽田空港へもアクセス良好です。

さらに、羽田・成田を結ぶ新路線の整備を進めており、このエリアがまさにハブになっていくとの説明を受けており、グローバル展開を視野に入れる私たちにとっても、入居するスタートアップ企業にとっても、5年・10年・20年のスパンで考えれば、これ以上ない立地です。

「八」の末広がりに込めた、ロゴデザインへの想い

――オフィスのデザインや「EIGHT」という名前には、どんな想いが込められていますか。

井上:名前は正直なところ、最初から決まっていたわけではありません。いろいろ案が出てまとまらない中で、「8階にあるんだからEIGHTでいいんじゃないか」とポロッと言ったのがきっかけです(笑)。

後からEIGHTの頭文字を取って「Entertainment Incubator in the Global Hub of Takanawa」という意味付けをしましたが、「八」という漢字は、松竹映画の富士山の見立てであり、加えて、末広がりの意味があります。また、ロゴには舞台のスポットライトのモチーフを込めています。スタートアップがここを舞台に世界へ飛び出していく──そんなイメージを重ねました。

後編へ続く

後編では、歌舞伎や映画の世界観を随所に取り入れたEIGHTのオフィスデザイン、開設から数カ月で数多くのスタートアップ企業を惹きつけた理由、そして松竹ベンチャーズが描く今後の展望について、さらに詳しくお届けします。

▽後編はこちらからご覧ください

【施設概要】
施設名:EIGHT(エイト)
所在地:東京都港区高輪2-21-2 THE LINKPILLAR 1 SOUTH 8F
アクセス:JR山手線・京浜東北線 高輪ゲートウェイ駅直結
営業時間:平日 8:00〜22:00(年末年始除く)
利用料金:1社(3名まで)月額10,000円(税別)
運営:松竹ベンチャーズ株式会社
URL:EIGHT|Entertainment Incubator in the Global Hub of Takanawa


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