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後編【株式会社ニコン 本社/イノベーションセンター】 「誰もが出社したくなるかっこいいオフィス」──移転2年で生まれた変化と、FCMが描く次のステップ

前編では、株式会社ニコンが本社/イノベーションセンターを建設するに至った背景と、「COLプロジェクト」の概要、設計思想をお伝えしました。後編では、移転後2年で生じた実際の変化──部門横断のコミュニケーション、採用ブランディングへの効果、そして「ファシリティ&コミュニティマネジメント(FCM)」という独自フレームワークで継続的なPDCAを回す運営の実態──に迫ります。

▽前編の記事はこちらからご覧いただけます

目次

移転2年で生まれたコミュニケーションの変化

――移転から2年が経ちました。当初のコンセプトは実現できていると感じますか。

豊田氏:「狙い通り」と言えるところは多いです。一番わかりやすいのは、人の動きが明らかに変わったこと。旧本社は10フロアを事業ごとに割り当てていたため、自分のフロアと会議室・トイレの往復しか動かない従業員も多かったのですが、今は階段を通れば自然に他部門の人と顔を合わせ、「ちょうどよかった、ちょっと相談があって」という会話が日常的に生まれています。

もっとも、最初から全員がスムーズに馴染んだわけではありません。「何をしていいかわからないスペース」に戸惑っていた従業員も、1年・2年と経つうちに使い方を覚え、活発に動き回るようになってきた。そういう様子が少しずつ見えてきたことが、運営側として一番嬉しい変化です。

すれ違った際に気軽に会話できる工夫や、屋外でリラックスしながら業務に取り組める環境も整えられている。

鈴木氏:以前は話す機会がなかった他部門の人と交流が生まれた、という声が多く届いています。社員食堂である「DINING 1917」(創業年1917年にちなんだ名称)には550席あり、1日に約1,100人が利用します。偶然同席した別部門の人と食事しながら情報交換ができるなど、まさに狙っていた効果で、外のランチや宴会に行かなくてもここで懇親が生まれます。

DINING 1917は、ランチタイム以外は作業や打合せスペースとしても利用可能。同僚とおやつを食べて少し休憩されている方も。

――「Dining1917」では夜にお酒が飲めると伺いました…!

豊田氏:水曜日の夜はお酒も楽しめる形で営業しています。クオリティの割にリーズナブルな価格設定で、従業員同士のコミュニケーションの場として活用されています。夜の予約制パーティーも随時受け付けていますので、社内の懇親会や節目のイベントにも使われています。

「どこにいるのかわからない」問題とフリーアドレスの現実

――フリーアドレスにはよく「人の居場所がわからなくなる」という課題が挙がりますが、御社ではいかがでしょうか。

鈴木氏:正直に申し上げると、その問題は発生しています。スマートフォンアプリで座席位置を確認できるシステムを導入していますが、浸透度や使い勝手にはまだ改善の余地があります。マネジメント層から「部下がどこにいるのかわからない」という声もあがっており、これは継続的な課題です。

一方で、制度やツールだけで解決するのではなく、上司と部下の双方が、日頃のコミュニケーションを工夫していくことも重要だと考えています。実際には「あの人はだいたいこの辺りにいる」という暗黙の居場所が各自に生まれてきていて、それほど深刻な混乱には至っていません。ルールで縛るより、自律的な使い方が定着するよう、現場の声も踏まえながら運用を改善していきたいと考えています。

――部署間のローテーションや席替えはされていますか?

鈴木氏:私たちの所属する経営管理本部内での、部門間のゾーニングのシャッフルにも取り組んでいます。経営管理部門では機密性の高い情報を扱う業務も多く、業務効率や情報管理の観点から、慎重な検討が必要な部分もありましたが、ようやくつい最近、実施できました。こういった取り組みを継続していくことが、本当の意味での部門横断コミュニケーションにつながると思っています。

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株式会社ニコンのオフィスデザイン事例|清和ビジネス

採用・ブランディングへの効果──内定者が社長に伝えた言葉

――このオフィスは採用面でも効果があると聞きました。

鈴木氏:採用面接でオフィスを見た学生から「こんなすごいところで働けるんですか…!」という声が多く出ています。毎年10月に行う内定式でも、内定者が社長に直接「こんなオフィスで働けるなんて幸せです」と伝えに来た、という話も聞いています。定量的に採用効果を測るのはなかなか難しいのですが、定性的な影響は確実にあります。

六日市氏:一方で、本社がいくら素晴らしくなっても、工場で働く従業員も多くいますし、老朽化が進む工場も存在します。本社だけが良くなっても仕方ないという課題意識のもと、現在は各地の工場の食堂・エントランス・休憩室・トイレなど、「全従業員が使う・目に入る場所」のリノベーションを順次進めています。そこでも清和ビジネスさんに大変お世話になっているところです。

2年間で見学100件・イベント60件──発信する本社の姿

――移転後2年間の対外的な発信活動についてお聞かせください。

豊田氏:デザイン賞や建築専門の賞を取りに行って評価を受けること、ポジティブなメッセージを社内外ともに届けるため、経営トップとともに、広報部や設計事務所などと連携し、多くのメディアに取り上げていただくことなどを狙い、積極的な発信を意識的に行ってきました。

おかげさまで口コミから噂が広がり、他社様からの見学受け入れはこの2年間で約100件を超えました。今回のようなインタビューも含めて、すべてが対外的にポジティブな発信、および他社との相互啓発のネットワーキングにつながっています。

六日市氏: アトリウムの劇場型空間を使ったイベントも2年間で約60件開催しています。入社式や社長タウンホールミーティング、社内外向けのイベントに活用し、音響・映像設備も大幅にアップデートしています。また、見学を受け入れることで私たち自身も学びがあります。「どうやってフリーアドレスを定着させたか」「ファシリティマネジメントをどう経営に位置づけているか」など、様々な会社の担当者との情報交換から、私たち自身の改善ヒントが得られることも少なくありません。

鈴木氏:見学に来られた方の様子を見ていると、私たち従業員もこの本社で働いていることに誇りを持てるようになっているように感じます。「また別の会社が見学に来た」という光景が、従業員のモチベーションにつながっている面もあるのではないでしょうか。

FCMという経営戦略──プロジェクトチームが運営に移行するまで

――移転後もプロジェクトメンバーが継続的にPDCAを回しているとお聞きしました。

六日市氏:これはなかなか珍しい取り組みだと自負しています。多くの場合、移転・建設プロジェクトは竣工と同時に解散しますが、私たちはコアメンバーをそのまま「ファシリティ&コミュニティマネジメント(FCM)チーム」として継続させました。毎週水曜日の午前中にメンバー約10名が集まり、改善事項・モニタリング結果・役員や従業員からの声を整理して「やること・やらないこと・やってはいけないこと」に仕分けし施策を決め、当初のコンセプトからぶれないよう継続的にランニングチェンジをしています。

豊田氏:「FCM」というキーワードを社内に浸透させ、経営層や社内で認識してもらえるよう働きかけています。常務(経営管理本部長)には「FCMで協議する」「FCMで決める」というように多くの場面で使っていただけるようになりました。ファシリティマネジメントは経営施策の一環であるという意識を組織に根付かせることが、長期的な価値につながると考えています。

「City of Light」が目指す次のステップ

――最後に、今後の展望についてお聞かせください。

六日市氏:プロジェクトの愛称「COL(City of Light)」には2つの意味を込めています。一つは、光学技術を核に持つニコンとして「光の可能性に挑む人と技術が集まる場所」であること。もう一つは、「町を照らす光になりたい」という地域への想いです。グローバルに100拠点以上を持つ企業として、この場所からニコンの技術と製品の価値を世界に発信する拠点であり続けたい。それが「ゆかりの地」への回帰に込めた、ものづくりと技術力への原点回帰の意味でもあります。

ハードウェアとしても、建物自体に自然光を取り込む庇(ひさし)の反射設計、特徴的なカマボコ型PC床板天井の形状が照明の拡散に寄与するなど、「光」のコンセプトをそのまま建物に具現化しています。コンセプトもハードウェアも、「光」が一本の軸で貫かれているのが、この建物の本質です。

鈴木氏:オフィス建設・移転を検討されている方へのメッセージとして申し上げるなら、経営トップとプロジェクトのコアメンバーが「どういう会社になりたいか」というビジョンを徹底的に共有することが、何より先決だということです。それなしに建物だけ先行させても、従業員はついてきません。私たちも全部が完璧にできたとは思っていませんが、そこを丁寧にやったことが、今の結果につながっていると感じています。

六日市氏:そして「建てて終わり」にしないこと。竣工はスタートラインです。私たちがFCMチームとしてPDCAを回し続けているのも、そういう思いがあるからです。移転後もしっかり運用し、改善し続けることが、本当の意味での投資対効果を生み出します

株式会社ニコンの皆さま、インタビューにご協力いただきありがとうございました!

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株式会社ニコンのオフィスデザイン事例|清和ビジネス

【施設概要】

施設名:株式会社ニコン 本社/イノベーションセンター
所在地:東京都品川区西大井1-5-20
延床面積:約42,000㎡(6階建て)
竣工:2024年5月
URL: https://www.jp.nikon.com/


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