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【後編】「130年前、松竹もスタートアップだった」──エンタメ特化インキュベーションスタジオEIGHTが体現する、老舗CVCの挑戦

松竹ベンチャーズが運営する、エンタメ特化型インキュベーションスタジオ「EIGHT」

前編では、松竹がインキュベーションに取り組む背景や、「EIGHT」が高輪ゲートウェイに生まれた理由について伺いました。

後編では、歌舞伎や映画の世界観を随所に取り入れたオフィスデザイン、開設から数カ月で100社超のスタートアップを惹きつけた理由、そしてEIGHTが目指す今後の展望について、さらに詳しくお届けします。

▽前編はこちらからご覧ください

目次

歌舞伎の息吹が宿るオフィスデザイン

――空間のデザインも非常に特徴的ですね。

井上:コンセプトは「演劇・映画の世界をオフィスに落とし込む」ことです。設計・デザインはOpen Aさんと清和ビジネスさんにお願いし、私たちがアイデアを出しながら一緒に作り込みました。

会議室はそれぞれ歌舞伎の定式幕(黒・柿・萌葱)の色で統一し、会議室名はそれぞれ色の名前にしています。

森本:一般の会議室によくある「会議室A・B」ではなく、入居者に空間の世界観をまるごと体験してもらいたかったので名称にもこだわりました。壁面には弊社のグループ会社である、歌舞伎座舞台㈱のスタッフが特別に手描きした一点ものの作品です。

天井は歌舞伎の衣裳をイメージした色とりどりのパネルを約360枚組み合わせており、空間全体がとにかく明るく、他にはないデザインだと好評をいただいています。

森川:フォーンブースには世界の映画祭にちなんだ名前を付けています。さらに、歌舞伎座の楽屋札として使われている木札に、勘亭流という書体で会議室名を表記するなど、細かいところまで「らしさ」にこだわっています。コワーキングスペースには、作業に集中できるゲーミング席、ちょっとしたコミュニケーションが生まれる屋台席など、多様なワークスタイルに対応した席を用意しました。

井上:ワークスペースの円形は歌舞伎の「回り舞台」、私が普段座る席は舞台袖の「黒御簾(くろみす)」をイメージしています。

森本:入居される方からは「おしゃれ」「かっこいい!」という声を多くいただいています。仕事のスタイルに合わせてこもれる席もオープンな席も選べるので、「その日の気分や業務内容で座る場所を変えられるのがいい」という評価もよく聞きます。

30社の想定が100社超に──EIGHTを選ぶ3つの理由

――当初30社の募集予定があっという間に100社を超えたとのことですが、スタートアップがEIGHTを選ぶ理由はどこにあると思いますか。

井上:大きく3つあると思っています。まず一つ目は、松竹というエンタメ企業とのパートナーシップへの期待です。「松竹と何かしら連携できれば、自分たちのビジネスにプラスになる」という期待感を持って入ってきてくださっている方が多いと信じています。実際にそうなるよう、私たちも努力しています。

二つ目は、高輪ゲートウェイ駅直結という利便性です。三つ目は、このオフィスそのものの魅力です。入居者の方が最初に来たとき、「ここはすごい」と思っていただける空間を作れたことが大きいと感じています。月額1万円(税別)という料金のコストパフォーマンスも後押しになっているでしょう。

森川:100社を超えてからは席数が少し足りなくなってきているのが現状で、増席を検討しています。入居者の出社頻度はさまざまで、毎日来る方は全体の1~2割ほど。週2〜3回の方が多く、毎日の在席数は20名前後です。ただその分、スペースを柔軟に使えているとも言えます。

エンタメ×AIやゲームまで──月4回のイベントで生まれるコミュニティ

――EIGHTではイベントも精力的に開催されていると聞きました。

井上氏:月平均で3〜4回のイベントを開催しています。中核になっているのが毎月第4木曜日に開催している「エンタメよんもくピッチ」です。5〜6社のエンタテインメント領域のスタートアップが登壇してピッチを行い、ベンチャーキャピタルのパートナーをゲストにお招きして「今、何が注目されているか」をリアルに語っていただく。その後、お酒や食事を楽しみながら交流ができるような懇親会も開催しています。

このイベントは無料・事前申込制で、通常は50名ほどが参加しますが、放送作家からベンチャーキャピタリストに転じた鈴木おさむさんをゲストに招いた回は100名近くの参加者が集まりました。大手企業のCVC担当者、事業会社の企画職の方、VC関係者など、エンタメ領域に関心を持つ多彩な顔ぶれが集まります。

「エンタメよんもくピッチ」以外にも、大手企業の方々との「エンタメ×AI」や「エンタメ×ゲーム」といったテーマでのイベントなども定期的に開催しています。エンタメ特化のピッチイベントやインキュベーション施設は他にほとんどなく、「エンタメのことならEIGHTで」というイメージが少しずつ浸透してきていると感じています。

――入居者同士のつながりも生まれているのでしょうか。

森本:はい、よいつながりが実際に生まれています。ある入居企業がAIを活用したいと思っていたところ、別の入居企業がAI関連サービスを提供していて、双方が協業に至ったケースがありました。

このオフィスは壁が一切ないフルオープンな設計なので、私自身も常にフロア全体を見渡せる席に座っています。新しく入居した方が不安そうにしていれば声をかけられるし、「こういう会社を紹介してほしい」という相談には毎日誰かしらが応じています。

Facebookグループや施設内のコミュニティボードでの情報共有に加え、お茶会やランチ会といったカジュアルな交流の場も定期的に設けています。弁護士や税理士・ベンチャーキャピタリストを招いた勉強会も好評です。

森川:コンセッションエリアに置いているお菓子が毎日あっという間になくなるほど活発に使われているのが、この場所の雰囲気を象徴しているかもしれません(笑)。

森本:入居企業は創業したばかりの方から、2度目の起業をされている方まで幅広くいらっしゃいます。そうした多様な経験値と視点が交差するのがEIGHTの面白さだと思っています。エンタメという共通テーマがあるから会話の糸口が生まれやすく、フラットなコミュニケーションが自然と起きやすい環境です。

「スタートアップと共に成長したい」──EIGHTが目指す次のステップ

――今後、EIGHTをどのように発展させていきたいとお考えですか。

森川:今後も優秀なスタートアップに継続して入居していただき、「エンタメといえばEIGHT」というブランドをさらに育てていきたいと思っています。イベントに来てくださった方が「毎回ここだ」と気づいて入居につながるような好循環を、もっと大きくしていきたいです。

森本:エンタメという文脈でいろんなコミュニケーションと情報交換が生まれる、フラットで開かれた場所──それがEIGHTの一番の魅力だと思っています。入居者同士が切磋琢磨しながら、松竹ベンチャーズも一緒に成長していける。そんな環境を作り続けていきたいです。

井上:一番大切にしたいのは、ここに入居してくださる企業と、新しい事業をしっかりと一緒に作っていくことです。ただ、私たちが一方的に乗り込んで我田引水をしてしまっては良い関係性とは言えません。共存共栄であることが大前提で、今すぐ連携ができなくても、中長期的にパートナーになれる関係を育てていきたいですね。

松竹が130年かけて積み上げてきた暗黙知を、外部の目で引き出してもらい形式知に変え、入居者にお伝えしていくことができる──それが他社にはない強みだと思っています。

一方で、相談に乗るからには私たち自身のレベルを上げ続けなければなりません。マクロ経済から最新のスタートアップトレンドまで、毎週メンバーで気になったニュースを持ち寄る勉強会を続けています。スタートアップの若い経営者と対峙するとき、固定概念で話してしまわないよう自分達を常にアップデートすることが必要だと、痛感しています。

エンタメ領域のスタートアップ企業の皆さん、少しでも興味をお持ちいただけたならば、ぜひEIGHTに足を運んでみてください。切磋琢磨しながらともに成長していきましょう!

松竹ベンチャーズ株式会社の皆様、インタビューにご協力いただきありがとうございました!

▽前編はこちらからご覧ください

【施設概要】
施設名:EIGHT(エイト)
所在地:東京都港区高輪2-21-2 THE LINKPILLAR 1 SOUTH 8F
アクセス:JR山手線・京浜東北線 高輪ゲートウェイ駅直結
営業時間:平日 8:00〜22:00(年末年始除く)
利用料金:1社(3名まで)月額10,000円(税別)
運営:松竹ベンチャーズ株式会社
URL:EIGHT|Entertainment Incubator in the Global Hub of Takanawa


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