品川駅・高輪ゲートウェイ駅の再開発

前回は品川インターシティなど品川駅港南口の再開発の動向やエリアマネジメントを中心としたソフト面の取組みについて紹介しました。

これまでの品川駅周辺の再開発の主役は港南口界隈でしたが、これからは高輪口(西口)や隣接する高輪ゲートウェイ駅周辺にも注目が集まっています。

これらの再開発が実現すれば、品川は、東京・新宿に並び、最もグローバルなエリアへの進化が期待されます。これからの品川の再開発の新たな動きについてリポートします。

品川駅の地下鉄計画が実現へ

まず、品川駅を中心とした、社会インフラがこれから大きく変わります。

品川駅はリニア駅の発着駅になり、京急品川駅では地平化の工事を推進中で、品川駅での京急線~JR路線間の乗り換えも容易になる効果を生み、2027年度の完成を目指しています。

また、かねてから実現の声が上がってきた東京メトロ南北線の分岐線(品川~白金高輪間)計画が本格的に始動しました。

計画概要は、東京メトロ南北線を⽩⾦⾼輪駅で分岐し、品川駅⽅⾯に延伸し、新たに品川駅に新駅を設置します。区間は、起点となる品川駅から東京メトロ南北線の⽩⾦⾼輪駅間の約2.8kmです。

東京メトロは、2022年3月に国土交通相から南北線同計画の事業許可を得ており、実現に大きく踏み出しているのです。これにより、六本⽊・⾚坂エリアなどの都⼼部と、品川駅周辺地区が直結される効果が期待されています。

東京都都市整備局参照

品川駅西口・国道15号線(第一京浜)の上空に広場が誕生

品川駅高輪口の国道15号線の上に公共・商業スペースを設置(出典:国土交通省関東地方整備局)

また、国土交通省関東地方整備局も2019年3月に「国道15号・品川駅西口駅前広場事業計画」をまとめたことは大きな注目点といえます。

計画によりますと、国道15号の上空には、立体道路制度の活用により広場が誕生し、「世界の人々が集い交わる未来型の駅前空間」を目指しています。

1階部分は、駅前広場の拡張により国道15号の「自動車交通を円滑化」、2階部分は、上空デッキなどの官民連携整備により、「歩行者の移動の円滑化」、「賑わいの創出」や「新たなモビリティの活用」を実現していきます。

これまで国道15号線により、駅の高輪口と西口の街の界隈が分断されていましたが、国土交通省関東地方整備局の事業計画が実現すれば、高輪口と西口の街が一体化し、大きな発展が期待されているのです。

動き出した品川駅高輪口の再開発(旧シナガワグース・新高輪プリンス跡)

品川駅高輪口で進められている街づくりの全容

こうした中、かねてから期待があった品川駅西口地区(高輪口)の街づくりも本格的に動き出しました。

品川駅西口地区は、品川駅の西側に位置する交通利便性の高い地区であり、国道15号、環状第4号線、補助線街路第14号線に囲まれた約14.7haという巨大な区域です。

計画地では、品川駅前の立地特性を生かし、高度な利便性を備えたMICE(コンベンション機能)、業務、観光支援、宿泊などの機能の充実や既存の公園を生かした緑のネットワークの形成が求められていました。

このため、これらの多様な都市機能の導入とともに、環境配慮や防災性向上に役立つ取組みにより、国際交流拠点の実現に向けたまちづくりを一体的に推進します。コンセプトは「世界の人々を迎え入れる品格ある迎賓都市」になります。

建物は主に2棟あり、A地区の施設建築の主要用途は、事務所、商業、ホテル、MICEで、地下4階・地上29階で高さは約155m及びます。

次のC地区は、2地区に分かれ主な施設であるC-1地区の施設建築の主要用途は、事務所、商業、住宅、産業支援となり、階数は、地下2階・地上30階で、高さは同じく約155mに及びます。

これからの予定としては、A地区は2023年度に着工し、2026年度に工事完了、C地区は2024年度に着工し、2027年度に工事完了し、品川西口の風景は、2027年あたりには大きく一変し、この2棟の建築物は品川駅西口の新たな顔になりそうです。

「品川駅西口地区A地区」と「C地区」のイメージパース(出典: 品川駅西口地区 再開発等促進区を定める地区計画 都市計画)

JR東日本が進める高輪ゲートウェイ再開発

次に、高輪ゲートウェイでの再開発を紹介します。

2020年3月に開業した山手線新駅である高輪ゲートウェイ駅の南側に再開発が進められています。

JR東日本は約9.5haの車両基地跡地で南北4街区から構成する総敷地面積7万2,000㎡、総延床面積85万1,000㎡の「品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)」を推進中で駅周辺の「まちびらき」は、2025年3月を目指しています。

文化・ビジネスの育成・交流・発信機能や外国人にも対応した居住・滞在機能など、国際競争力強化に資する都市機能を導入し、さらには帰宅困難者対策や自立性の高いエネルギーシステムの導入による防災対応力強化し、未利用エネルギーの有効利用や設備の高効率化などによって環境負荷低減も図られる街を目指しています。

高輪ゲートウェイ駅の再開発の対象面積は約8万6000㎠に及ぶ巨大なエリア(出典:JR東日本)

「100 年先の心豊かなくらしのための実験場」に資するまちづくりのため、街全体で SDGs をはじめとした社会課題の解決、環境面での貢献施策を推進します。

またICTなど、街の利便性向上に資するデジタルツインの活用を検討し、スマートシティ構築に向けた取組みを推進していきます。さらに4街区の南に隣接する品川駅方面に区域5と区域6の開発の将来構想も控えています。

2025年の高輪ゲートウェイ駅の全面開業を目指す。(出典:JR東日本)

事業概要などは次の通りです。

事業主:東日本旅客鉄道(JR東日本)
規模・高さ・延べ面積・用途は次の通りです。

【1街区】地上45階・地下3階・高さ約173m、 延床面積約14万9000㎡▽用途=住宅、教育施設、 駐車場など
【2街区】地上6階・地下4階・高さ約45m 、延床面積約3万1000㎡▽同=文化創造施設、駐車場など
【3街区】地上31階・地下5階・高さ約167m 、延床面積約21万1000㎡▽同=業務、商業、 生活支援施設、熱源機械室、駐車場
【4街区】地上30階・地下3階 ・高さ約164m 延床面積約46万㎡▽同=業務、ホテル、商業、コンベンション、カンファレンス、ビジネス支援施設、駐車場など

文化創造棟は、隈研吾氏が外装デザインを担当(出典:JR東日本)

東京都は品川を「日本の成長をけん引する」と位置づけ

こうした中、東京都は2020年3月に「品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン」を改定し、品川駅・田町駅周辺地域の将来像を「これからの日本の成長を牽引する国際交流拠点・品川」と位置付けております。

最も進んだビジネス街であり、世界の人々が集い交わる文化・知の交流の地域であり、次世代型の環境都市づくりの実現に期待されています。

前編では、品川におけるエリアマネジメントでの取組みを紹介し、テック企業が集積し、イベントなどをデベロッパーや企業が合同で盛り上げ、先進的な働き方を共有していることを取り上げました。

後編ではまさにハード面である再開発や地下鉄などのインフラ計画が推進している内容の紹介となりました。

お江戸の入り口から始まった品川の歴史ですが、今や日本の中で最もグローバルなビジネス街として期待が集まっているのです。

日鉄興和不動産が進める「品川」の街づくりの歴史と現在地

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