謝罪によって未来が変わる可能性もある?
大なり小なり、ミスが発覚した時はパニックに陥りがちです。混乱し感情的になり、冷静かつ迅速な判断ができない状態になってしまうこともあるでしょう。ミスはしたくないものですが、人間誰しもがミスをします。
その時に最善の対応ができるよう、自分や仲間がミスをしてしまった時の対策をしておくことは、更なるリスク回避へとつながります。
ひとつのミスによって大事な顧客を失うのか、誠意が伝わり信頼を取り戻すのか。全てはそのときの対応一つにかかってきます。
前回は感謝の伝え方についてでしたが、今回は謝罪の伝え方についてです。送る側も受け取る側も心地の良い感謝の気持ちとは違い、謝罪の言葉はより相手の置かれたシチュエーションや心境などに大きく左右されるため、慎重になる必要があります。
高い文章力で持って相手へ気持ちを伝えることはもちろんですが、ここでは「謝罪をするにあたっての準備や心構え」にもフォーカスします。
まずは受け入れる
どのようなミスであっても残念ながら起こってしまったことは元には戻りません。まずは目の前の現実を全て受け入れることがスタート。それがどんなに大きなミスであったとしても、真っ白になってパニックになりそうな頭を一旦落ち着かせます。
「自分はミスをした。次の対応を考えよう。」
声に出して言葉にするのもいいでしょう。(大きな声では言えませんが)今自分が置かれている状況を客観的に見て、次の行動に移す準備をするのです。
「自分はミスをした」だけだとネガティブな現実だけが頭の中を独占して、その先のことを考えることが困難となってしまいます。次のステップをイメージできるような言葉もセットで添えます。
おすすめは「しよう、行こう、見よう、食べよう、やめよう」などのアクションを促す言葉です。これはミスをしたときに限らず、何か気が進まないときや、次にやることが明確にならず立ち往生してしまったときのマインドリセットにも役立ちます。
これは日々の行動で習慣づけが可能です。脳をトレーニングして習慣づけることによって思考の切り替えが早くなり、憶測や言い訳を与える隙をつくらせないようにするのです。
次に移す行動が明確になり、何よりその行動に対して前向きな気持ちで取り組めます。
謝罪の言葉以上に大切なこと
すいませんでしたと謝るだけなら誰にでもできます。しかし誠心誠意、心からの謝罪を相手へ伝えるためには、知っておかなければならないことがあります。
それは「相手の気持ちに共感する」ことです。これを知っているか知らないかで、伝わり方は大きく変わります。
謝罪に限らず何か思いを伝えるときは、直接会いに行く、電話での対応などが理想ですが、毎回必ずしもそれが可能とは限りません。メール対応などであれば、顔の見えない相手にいかに共感し、納得してもらえるか。謝罪文ほど文章コミュニケーション力の真価が試される場面はありません。
お客様から「ネットで買った商品がまだ届きません。もう2週間になりますがどうなっていますか。」こんな内容のメールが来たときはどうすればよいでしょうか。
ここで盛り込んだポイントはこの5つです。
- ご購入いただいたお礼
- 誠心誠意の謝罪
- 相手の気持ちに共感する
- 原因について
- 適切な対応策を講じる
特に必要なのは「相手の気持ちに共感する」ことです。クレームを言う人の多くは、ただ謝罪の言葉が欲しいのではなく、自分の気持ち(怒り、落胆、失望)をわかってほしいのです。
謝罪に必要なのは、お詫びの言葉以上に相手の気持ちを無条件に受け入れる姿勢です。
これは社外へ向けたメールでの謝罪例ですが、社内の場合はどうでしょう。
見積書の金額入力ミスを例に、どのような謝罪がベストかを考えます。
謝罪A
最初に申し訳ありませんでしたと謝っていますが、なんとも釈然としないやりとりが続きます。これでは上司の怒りを鎮めるどころか、イライラの増幅が目に見えてくるようです。では次はどうでしょう。
謝罪B
社内への報告は、いかに内容をまとめ、聞き手へ負担がないかが重要になってきます。まとめる際は、自分の感情や弁明するような内容は入れず、事実のみを簡潔にまとめましょう。
そうすることで言い訳がましくなく、すっきりと分かりやすい内容になります。
前者も後者も内容は同じですが、後者の謝罪の言葉では、コミュニケーションがスムーズにいっていれば結果が違っていたかもしれないと、相手(上司)の気持ちに寄り添う共感の意が示されます。
謝罪がチャンスになる事もある
実際に顔を見て謝罪する際も、顔が見えずに文章だけの謝罪文を伝える際も、伝え方ひとつでいかようにも受け取れます。高ぶった気持ちに寄り添った言葉を紡げば、相手の怒りも静まりやすく、場合によっては「ここの会社(人)の対応はしっかりしている」と逆に信頼を勝ち取ることにもつながります。
自省の言葉で謙虚な姿勢と反省の意が伝われば、相手も寛大な気持ちになるはずです。
備えあれば患いなし。あまり前向きに準備したいことではありませんが、この心の準備ひとつで謝罪の場がチャンスの場に変わるかもしれません。