大人の「ありがとう」と「ごめんなさい」本当に相手に伝わっている?
日常で「申し訳ありませんでした」を何の抵抗もなく普通に使うようになったのはいつ頃からでしょう。おそらく学生から社会人になった頃が入り口だったのではないでしょうか。
学生の時の謝罪の言葉といえば「ごめんなさい」や「すいませんでした」などがより身近でした。
「申し訳ありません」「大変失礼いたしました」などの丁寧な言葉はなんとなく無味乾燥に聞こえていたのを記憶しています。その感覚は今でも時たま感じることがあります。
感謝の言葉と謝罪の言葉を述べているはずなのに、どちらも定型文化しそのことばを向けられた先に自分がいないような感覚に陥ります。
日頃使うことの多いはずの大人の「ありがとう」と「ごめんなさい」。その時その場で感じた相手に対する感謝の気持ち、自分の失態により相手に迷惑をかけてしまった心苦しい胸の内。それらは本当に相手に伝わっているのでしょうか。
伝わりづらい言葉には具体性を持たせよう
相手へ恩を感じたとき、心動かされ有難いという気持ちが生まれたら言葉にして相手へ伝える方がもちろんいいですよね。みなさんも日々そうして言葉にしているはずです。
しかし、ありがとう・すみません・かっこいい・かわいい・がんばって・よかったです……。これらのように、ついつい使ってしまうシンプルで抽象的な言葉ほどその真意はなかなか伝わりづらいものです。
届きにくいメール、チャットでの御礼
取引先との打ち合わせを終えた後日あいさつのメールを入れるとします。
これを受け取った相手がもしも超多忙を極めている中、この打ち合わせのためにスケジュール調整をしていたとしたら、この「ありがとうございました」はどれほど相手に響くのでしょう。
そもそも何に対しての「ありがとうございました」なのかが不明瞭です。打ち合わせに割いてもらった時間なのか、有意義な内容に対してなのか、もしくは自分の中で心に響く何かがあったのか。
これが対面で話しているなら多少言葉足らずでも、表情や声のトーン、雰囲気などで相手へ伝わる幅は広がります。
しかしそうした情報が一切確認できないメールやチャットなどの文章となると伝わる幅はぐっと狭まってしまいます。
もちろん相手のスケジュールなど把握のしようがないので、どのような状況でミーティングを入れ込んだのかは知る由もありません。しかし相手の時間をもらうというところでは、多忙であっても余裕があってもその人の人生の中の貴重な時間を共有しているということは確かです。
そしてその時間が相手にとっていつだって有意義になるとは限りません。
万が一相手に「時間を無駄にしてしまった」などと思わせていたとすれば、冒頭の「先日はありがとうございました。今後に関してですが…」と早々に本題に入られてしまっては気分を害してしまう可能性すらあります。
感謝の言葉を伝えているはずなのに気分を害されてしまっては本末転倒です。その後の人間関係にも大きく影響してくるでしょう。
気持ちを伝えるときは文章に具体性を
こちらの文では「ありがとうございます」の言葉は使っていませんが、相手を尊重する気持ちと先方の意見を聞けたことへの感謝を具体的に述べているので、より伝わりやすい文章となります。
感謝の気持ちが伝われば、たとえ相手にとってはあまり実のある内容じゃなかったとしても、少なくとも時間を無駄にしたとは感じないでしょう。少し長いと思うようであれば
相手の名前とメンバーという言葉を入れることによって、感謝しているのは自分だけではないということも伝わります。
固有名詞や数字などは最強の具体性
自分以外にも打ち合わせに参加する人物がいた場合はこのような使い方も効果的です。固有名詞や数字などは最強の具体性です。もしわかっていること、記憶していることがあれば積極的に入れていきましょう。
これらのように文章を少し具体的にするだけで、“無味乾燥な定型文”から“相手を尊重する感謝の言葉”に大きく変わります。そしてなにより自分の気持ちが相手に伝わりやすくなります。
相手はそこにいるか
顔が見えない相手へ気持ちを伝える文章を書くときは、相手が目の前にいるつもりで書くとより伝わる文章ができます。
その時の情景や相手の表情が思い起こされ、自分は何に感謝していてどんな気持ちだったのかが再現されやすくなるからです。そのため浮かんでくる言葉も自然に具現化されます。
しかしこれが相手が目の前にいない、つまり読み手のこと無視した文章だと、冒頭のような気持ちが伝わらない「ただの文字の羅列」となってしまいます。
そんな文字の羅列文になってしまわないためにも、この「相手を意識する」ことは何よりも大切です。どんなに難しい熟語や多くの語彙を知っていても、そこに相手がいないのであればそれらの言葉が読み手へ届くことはないでしょう。
あなたが思うほど相手はあなたを理解できていない
いちいちそこまで書かなくてもわかるだろうと思うかもしれません。
しかし人は意外とあなたが思っているほど、あなたのことを理解してはくれません。
伝えたいことがあるのであればまず自分が何を伝えたいのかを明確にすることが大事です。
メールの度にそこまで時間を割いていられないと思う人は、この作業が「手間」だと感じているのではないでしょうか。
しかし考えてみてください。この一文で相手の心を掴むか否かで今後の人間関係が左右されるのであれば、そこに時間を割く価値は大いにあるのではないでしょうか。
確かに慣れるまでは手間と感じるかもしれません。しかし一度慣れてしまえばその回路ができあがってしまうので、手間に感じることなどなくなります。文章力、コミュニケーション能力は鍛えれば必ず身に付きます。
日常のやり取りで文章力は鍛えられる
メールで限定すると日頃メールを打つ機会がそう多くない人もいるでしょう。
しかし友達とのSNSでのやりとりはどうでしょうか。しないと言う人を探す方が難しいと思います。
相手を意識した文章は、日頃のやりとりでも十分に鍛えることができます。
たとえば
なんら違和感のない友達同士の会話です。しかしこれが
久々の再開で嬉しかった気持ちと、近いうちにまた会いたいという思いがよく伝わってきます。もらった相手も楽しい時間を共有できたことを嬉しく思うでしょう。
相手がお互いよく知れた親友同士なら気恥ずかしさもあり、そこまでのモチベーションに至らない人もいるかもしれません。しかしこれが、気になっていた人との食事で必ず次に繋げたい!という場面だとしたら……。
あなたならどちらの方がまた会いたいという気持ちになりますか。
もちろんSNSは絵文字も使えるので表現方法はメールよりずっとバリエーションに富んでいます。しかし伝えるのはあくまであなたから出る「言葉」です。このように「相手を意識する文章」の練習は日常でも簡単にできます。少しでも文章力を上げたいと思っている人は早速今日から実行してみましょう!
感謝の気持ちは伝える方も伝えられる方も嬉しいものですが、これが謝罪文となるとそうはいきません。
一歩間違えば相手を更に怒らせてしまって火に油を注ぐことになり、これまでの努力が水の泡に……などという悪夢のような話も決して他人ごとではありません。