
2025年は、昭和の年号で数えるとちょうど「昭和100年」にあたります。
hatarakuでは「昭和100年特集」と題し、昭和と令和のオフィス環境や働き方の変化について、昭和からタイムスリップしてきた“おじさん会社員”の視点でお届けします。
目次
プロローグ
時は昭和55年。私は、昭和時代で日々奮闘しているサラリーマンの一人である。
今日も肩パッド入りのダブルスーツにネクタイをキュッと締めて通勤。満員電車はもはや日常で慣れっこだが、今日は珍しく目の前の座席が空いていた。「今日はラッキーだな……」と思いつつ座ったのも束の間、いつの間にかうとうとと眠ってしまったらしい。
目を覚ますと、ちょうど職場の最寄り駅に到着していた。慌てて降りると周囲の雰囲気がまるで違うことに気づく。オフィス街の通勤ピークにもかかわらず、道行く人々は皆カジュアルな格好をしており、しかもなぜか耳栓のようなものをしている。
声をかけてみると、なんと2025年!年号は「令和」というらしい。私はどうやら、昭和から令和という未来へタイムスリップしてしまったようだ……。
とりあえず、勤めている会社名を伝えて道を尋ねると、目の前の人は手のひらサイズのテレビのような機器を操作し、丁寧に道案内をしてくれた。
そして、教えられた通りに歩き始めると、たどり着いたのは私の知らない未来のオフィスだった……。
令和に消えた昭和のもの
常に鳴り響く固定電話
会社の前にいた若者に名刺を見せ、「昔のロゴの名刺、初めて見ましたよ~」と言われつつも、なんやかんやで同じ会社の従業員だと信じてもらえ、無事にオフィス内へ入ることができた。
オフィス内に足を踏み入れてみると、予想外の光景が広がっていた。あの「リンリンリン!!」と鳴り響く固定電話の音が一切しない。どうやら、朝に道を教えてくれた若者も持っていた「スマホ」が、従業員全員に会社から支給されているらしい。
スマホがあれば、オフィスのどこにいても、さらには外出中でも電話を掛けたり、受けたりできる。そのため、オフィスの一部の狭い空間で騒々しくなることは一切ない。
それに加えて、耳を澄ますと、何とも心地よい鳥のさえずりが聞こえてくる。どうやら、従業員のリラックス効果を促進するために、バイオフィリックデザインという手法を取り入れているようだ。
バイオフィリックデザインというのは、音・光・色・香りなどを用いてまるで自然の中にいるように表現するデザイン手法のことらしい。人間というのは本能的に「自然と結びつきたい」と感じている生き物で、自然を感じながら仕事をすれば心が落ち着き、集中力や創造力がアップすると言われているようだ。
自然と調和しているようなこのオフィス環境は、私の知るオフィスとはまったく異なる、新たな働き方を象徴しているように感じられた。

タバコ
令和のオフィスには4人席がひとつの島のようになっている場所や、10人ほどが向かい合って並んで座れるような大きなデスク、窓際にはバーのカウンターのような席まであり、いったいどこに座ればいいのかまったくわからなかった。戸惑いながらオフィス内をウロウロしていると、「固定席はないので、好きな場所に座っていいんですよ」と優しそうな女性従業員が声をかけてくれた。
彼女によるとどうやら、普段は話さないような他部署の従業員とのコミュニケーションを活性化するために、会社では「フリーアドレス」というのを取り入れているらしい。
フリーアドレスというのは、従業員一人ひとりが仕事内容や気分に合わせて自由に席を選んで効率的に働けるようにする仕組みらしい。また、部署を越えた偶然の出会いが自然なコミュニケーションを生み出し、部門間の連携や情報共有が活発になるという狙いもあるようだ。一方で、集中したいときには、窓際の席に移動して静かな環境で仕事をするらしい。
私が知っている昭和のオフィスでは、上座に上司がいて、ほかのメンバーは固定された島型の席に並んでいた。チーム内のコミュニケーションはしっかり取れていたが、他部署との交流はあまりなかった。そう考えると、フリーアドレスには、成功事例の共有や新たな発想のきっかけなど、多くのメリットがあるように思えた。
そんなことを考えていると、ふとタバコを吸いたくなった。フリーアドレスについて教えてくれた彼女に「灰皿、ある?」と聞いてみたが、彼女は目をまんまるにして驚き、「あるわけないじゃないですか」思いのほか冷たい口調で返された。さっきまでの優しさはどこへやら、一瞬で表情が変わってしまった。
どうやらこの時代では、オフィス内でタバコを吸うのは非常識とされているらしい。私は、またひとつ、令和という時代の衝撃を受けたのだった。

大量の紙の資料
そういえば、なんだかみんな机の上が驚くほどスッキリしている。私がいつも使っている机は、紙の資料が山積みになっていたというのに、この時代の人たちはまったく働いていないのかと、半ば呆れた気持ちになった。
すると、近くから「このあとの会議の資料、チャットしたので目を通しておいてください」という会話が聞こえてきた。……チャット?
どうやら令和では、資料はパソコンでデータとして「チャット」というツールから送られ、そのままパソコンの画面で、各自が会議までの都合の良い時間に確認するらしい。会議の資料は紙ではなく、すべてデータでやり取りされているのだ。
さらに驚いたことに、過去の会議の議事録もすべてデータとして残しているので、振り返りや引き継ぎの際にも非常に便利だという。何から何まで効率的だ。
そして、そのパソコン自体も私が知っているパソコンよりもずっと薄く、みんなまるでノートのように軽々と持ち歩いていることに驚かされた。外出先でも、ノートパソコンやタブレット端末を携帯し、どこでも仕事ができる環境を整えているようだ。大量の紙資料を鞄に詰めて出かけていた自分の姿を思い出しながら、「これはかっこいいな……」と、思わず羨ましくなってしまった。
紙の資料を削減し、データ化していくことを「ペーパーレス化」というらしいが、どうやらフリーアドレスで働くためには、これが欠かせない要素の一つのようだ。

令和まで残っている昭和のもの
「書く」ということ
だいぶインターネットが発展し、便利な世の中になったとはいえ、「書く」という行為はまだ残っているようだ。というのも、会議のときにはホワイトボードを使ってアイデアを出したり、ポストイットを使って意見を整理している人をよく見かけたからだ。
ホワイトボードには進化版があり、たとえば「MAXHUB」という製品は、書いた内容をそのままチャットで送信し、チーム全員に瞬時に共有できるという便利な機械となっている。令和の時代でも、こうしたアナログ的な「書く」という行為は、依然として活躍している。
昭和では、ホワイトボードに書かれた内容を見落とさないよう、手帳やノートに必死でメモを取っていたものだ。しかし、令和では書いた内容がそのままデータとして共有されるため、情報の抜け漏れや認識のズレも起きにくく、ずいぶん効率的に仕事が進められるのだろう。
インターネットがこれほど発展した現代においても、アイデアをまとめたり、思考を整理したりする際には、「書く」ことの価値が失われていない。
私は改めて、「書く」という行為が令和でもなお重要であり、求められているのだと実感した。

複合機(コピー機)
ペーパーレス化が進んでいるものの、複合機は令和のオフィスにも存在していた。なんだかんだで紙の資料が必要な場面は多いが、基本的には紙の資料をPDF化してデータを保存することが主流になっているらしい。
そして、複合機の横には、コーヒーなどを飲めるちょっとした休憩スペースが設置されている。
ここは、偶発的な会話が生まれることを狙って、あえてこの位置に設置されているらしい。
他部署の従業員とも自然と顔を合わせ、立ち話が生まれることで、普段の業務では交わらないような意見や気づきを共有できる──そうした“偶発的なコミュニケーション”を促す工夫なのだそうだ。
昭和のオフィスでは、こうした意図的な「交流のデザイン」はなかったが、令和ではオフィス空間そのものがコミュニケーションの場として捉え直されているように感じた。
新たなつながりを生み出し、組織全体を活性化させるためのさまざまな工夫が、あちこちにちりばめられているのだ。
次回へつづく
いかがでしたか?
令和のオフィスでは、業務の効率化やコミュニケーションの活性化を意識したオフィスづくりが主流となっています。時代に合わせて変化を遂げてきたオフィスは、さまざまな年代や部署、役職の従業員たちが和気あいあいと働く場所へと変化してきています。
ほかにも、昭和から令和にかけて姿を変えてきた「モノ・コト」、そして今なお受け継がれているものもたくさんありますので、次回の特集でご紹介いたします。お楽しみに!
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