ABWとは?メリット・デメリットや失敗しない導入手順を解説

柔軟な働き方を実現するため、ABW(Activity Based Working)を導入する企業が増えています。本記事では、ABWの定義やフリーアドレスとの違い、導入によって得られるメリット・デメリットを詳しく解説します。

失敗しないための導入手順や、清和ビジネスが手がけた実際のオフィス事例も紹介するので、生産性向上やオフィス改革の参考にしてください。

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目次

ABWとは?

ABWは「Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」の略称であり、オランダのコンサルティング企業であるVeldhoen + Co(フェルトホーエン・アンド・カンパニー)が提唱したワークスタイルです。

ABW=業務や気分に合わせて働く場所を自由に選べる働き方

ABWは、従来のように特定の自席に縛られるのではなく、仕事の内容や気分に合わせて、働く場所を自由に選べる働き方です。従業員は、集中して作業したいときは個室ブース、打ち合わせのときはオープンスペース、リラックスしたいときはカフェスペースといったように、最適な環境を自ら選択できます。

また、オフィス内に留まらず、自宅やサテライトオフィスでの勤務も包含する柔軟なスタイルです。

ABWの目的

ABWを導入するおもな目的は、従業員の自律性を促し、組織全体の生産性を向上させることです。個々の業務や気分に適した環境を提供することで、無駄な移動時間を減らし、集中力を維持しやすい状況を作り出します。

ABWの基本となる10のアクティビティ

一般的なオフィスにおける働き方では、従業員の行動を「10のアクティビティ」に分類できます。

  • 1人で集中する「高集中」
  • ほかの従業員と短いコミュニケーションを取りながら進める「コワーク」
  • チームメンバーや取引先との「電話・Web会議」
  • 2人が横並びで作業を進める「2人作業」
  • 複数人で会話や議論を行う「対話」
  • 計画の進捗を共有する「情報整理」
  • 知識を共有する「知識共有」
  • 協働でアイデアを出し合う「アイデア出し」
  • 休憩を取る「リチャージ」
  • 特殊な環境下や設備を用いる「専門作業」

これらの活動内容を可視化し、それぞれに適したデスクや什器、空間をオフィス内に配置することで、従業員が目的を持って場所を選択できる環境を整えます。

ABWとフリーアドレスの違い

ABWとフリーアドレスは、どちらも「自席を持たない」点では共通していますが、その本質や目的は異なります。

フリーアドレスは、オフィス内での座席を自由に選択する仕組みであり、おもにスペースの有効活用やコスト削減に主眼が置かれています。一方、ABWは、オフィス外も含めた多様な場所から、業務内容に応じて最適な環境を自ら選択する「働き方」そのものを指します。

ABWが注目される背景

ABWが注目される背景には、働き方改革の進展やICT技術の向上があります。 かつての労働者は、オフィスに出社して自席で作業することが一般的でしたが、クラウドツールやWeb会議システムの普及により、場所を選ばずに業務を遂行できるようになりました。さらに、コロナ禍を経て日本でもテレワークが浸透し、オフィスの役割が「作業場所」から「付加価値を生む場所」へと変化したことも、導入を後押しする要因となっています。

ABWを導入するメリット

ABWの導入は、従業員と企業の双方に多くのメリットをもたらします。

業務効率が高まり、生産性が向上する

ABWでは、業務内容に応じて最適な場所を選択できるため、生産性が向上します。

例えば、集中が必要な資料作成時は静かな個別ブースを選び、アイデア出しの際は開放的なコラボレーションエリアを利用するといった使い分けが可能です。従業員が、自身の状態に合わせた環境で作業を行うことで、業務のスピードと質が高まります。

優秀な人材の採用につながる

柔軟な働き方を認める姿勢は、採用市場における大きな強みとなります。ABWの導入により、場所や時間に縛られない多様なワークスタイルを提示できるため、育児や介護と仕事を両立したい層や、遠隔地に住む優秀な人材へもアプローチが可能です。 先進的で自由度の高い労働環境は、企業のブランド価値向上にも貢献します。

ワークライフバランスの実現につながる

従業員が自ら働く場所を選択できると、プライベートとの調和を保ちやすくなります。

特に、テレワークを組み合わせたABWであれば、通勤時間の削減により捻出された時間を家族との時間や自己研鑽に充てられるでしょう。また、精神的な余裕が生まれることで、心身の健康維持につながり、結果として仕事に対する意欲やパフォーマンスの維持が可能になります。

コスト削減につながる

ABWの導入により、オフィス全体の面積や備品の最適化が進み、コスト削減が期待できます。

全従業員分の固定席を設ける必要がなくなるため、賃料の安い小規模なオフィスへの移転や、余剰スペースの有効活用が可能です。さらに、ペーパーレス化やデジタルツールの活用が並行して進むことで、印刷代や文具代などの経費抑制にもつながります。

従業員エンゲージメントが向上する

自律的な働き方を尊重されることで、従業員の会社に対する信頼感や貢献意欲が高まります。自分自身で環境をコントロールして成果を出すプロセスは、仕事に対する責任感と満足度を向上させるでしょう。

また、企業側が従業員の多様な価値観を認める姿勢を示すことで、組織への帰属意識が高まり、離職率の低下や社内文化の活性化といった効果も期待できます。

ABWを導入するデメリット・課題

ABWの導入には多くの利点がある反面、運用上の課題も存在します。

従業員の勤怠管理やマネジメントが難しくなる

ABWを導入すると、従業員が異なる場所で業務を行うため、従来の対面を前提とした勤怠管理や進捗把握が困難になります。誰が・どこで・何をしているかが不透明になりやすく、評価の公平性を保つための工夫が必要です。

成果に基づいた評価制度の整備や、オンライン上で稼働状況を共有できるツールの導入など、ITを活用したマネジメント手法への転換が求められます。

帰属意識や一体感が薄れやすい

顔を合わせる機会が減少することで、チームの一体感や企業への帰属意識が低下する恐れもあります。偶発的なコミュニケーションが減ると従業員同士が親睦を深めにくく、組織としての結束力が弱まりかねません。

定期的な対面イベントの開催や、チャットツールを用いた積極的な雑談の推奨など、意識的に交流の場を設ける仕組み作りが必要です。

従業員の自主性に左右される

ABWは、従業員が自律的に業務をコントロールできるような、高い自己管理能力を持っていることを前提としています。自身で最適な場所を選び、時間配分を決定する必要があるため、指示を待つ姿勢が強い従業員にとっては、かえって負担やストレスになる可能性があります。

導入にあたっては、各個人が自律して働けるよう、マインドセットの変革を促す教育やサポートが重要です。

導入コストがかかる

従来のオフィスからABWへ移行するには、相応の初期投資が必要です。多様なアクティビティに対応したレイアウト変更や、専用の什器購入、リモートワークに対応するためのノートパソコン配布など、多くの費用が必要となるでしょう。

また、場合によっては座席予約システムや社内ネットワークの拡張など、インフラ整備の費用も発生します。長期的な投資対効果を見極めた上で、計画的に進めることが大切です。

セキュリティの強化が必要になる

ABWではオフィス外で業務を行う機会が増えるため、情報漏えいのリスクが高まります。そのため、導入に当たってはパソコンの紛失や盗難、公衆Wi-Fiの利用によるサイバー攻撃などへの対策を徹底しなければなりません。

デバイスの暗号化やVPNの活用、クラウドストレージの利用制限といった技術的な対策に加え、従業員へのセキュリティ教育を継続的に実施し、防犯意識を高めることが必須です。

ABWの導入が向いている企業の特徴

ABWは、特定の業種や規模に限らず導入が可能ですが、特に適している企業には共通の特徴があります。例えば、以下のような企業です。

  • テレワークやモバイルワークを積極的に活用しており、ICT環境が整備されている
  • プロジェクトごとにチーム編成が変わるなど、流動的な働き方が求められる
  • 自律的な社風を持ち、従業員一人ひとりが自身の裁量で成果を出すことを推奨している

このような企業であれば、ABWによる生産性向上の恩恵を享受しやすいでしょう。

失敗しないABWの導入手順

ABWの導入を円滑に進めるためには、以下のような手順で進めるとよいでしょう。

1. 導入目的を明確化する

まずは、なぜABWを導入するのか、目的を明確にします。「生産性の向上」「従業員の満足度改善」「オフィスコストの削減」など、自社が抱える課題に対して、ABWがどのような役割を果たすべきかを明らかにしましょう。

目的が定まることで、施策の優先順位や判断基準が揺るぎないものになります。

2. 現状の課題を洗い出す

次に、現在の働き方やオフィス環境における課題を洗い出します。従業員へのアンケートやインタビューを行い、座席の稼働率やコミュニケーションの頻度、現状の不満点などを可視化しましょう。 現場のリアルな声を拾い上げ、具体的な課題を把握することで、実効性の高い施策の設計が可能になります。

3. オフィスのレイアウトを決定する

洗い出した課題に基づき、最適なオフィスレイアウトを設計しましょう。集中作業用のブース、少人数での打ち合わせスペース、リラックスできるラウンジなど、目的別のゾーンを適切に配置します。

レイアウトの検討にあたっては、画一的にABWを導入するのではなく、事前のヒアリングを通じて従業員のリアルな声を吸い上げ、部署の業務特性に即した運用を検討することが大切です。

単に座席を減らすのではなく、従業員が「働きたい」と思える機能的な空間構成を目指しましょう。

4. 就業規則や評価制度を見直す

場所を選ばない働き方に合わせて、社内制度をアップデートすることも大切です。 テレワーク時の手当や勤務時間の管理方法、成果に基づく人事評価制度の構築など、新しいワークスタイルを支える仕組みを作ります。従業員が迷いなく業務に専念できるよう、ルールを明文化し、不公平感のない制度設計を行うことが重要です。

5. IT環境を整備し、セキュリティ対策を実施する

どこにいても円滑に業務ができるよう、インフラ環境を強化しましょう。ノートパソコンの支給やクラウドツールの導入に加え、高速で安定したネットワーク環境の構築が求められます。

また、デバイスの管理や情報の取り扱いに関するセキュリティガイドラインを策定し、技術面と意識面の両方からリスクを最小限に抑える対策を講じましょう。

ABW導入企業事例

ここからは、清和ビジネスがオフィス設計を手がけたABWの導入事例を紹介します。

清水建設株式会社 名古屋支店

清水建設株式会社名古屋支店様では、2024年の新築移転を機に、人と人がつながる「コミュニケーションHUB」を目指してABWを導入しました。全部署で画一的に固定席を廃止するのではなく、従業員への複数回のヒアリングを通じて現場に即したレイアウト・運用としたのが特徴です。

また、10階と11階をつなぐ吹抜の設置や、従業員の位置情報をリアルタイムで把握できるシステムの導入などにより、部署の枠を超えたコミュニケーションが活性化し、一体感のあるオフィスを実現しています。

※参照:事例・実績| 清水建設株式会社 名古屋支店

グローバルセキュリティエキスパート株式会社

リモートワークが定着する中で、社内のコミュニケーションを見直すことをきっかけに拡大移転を実施した同社では、強固な企業文化を育むコミュニケーション拠点としてABWを採用しました。 オフィスの中心に「横丁」を作ることで部署間の垣根を超えた交流が自然と発生する工夫を凝らしています。

また、東京湾を一望できるラウンジや、講演会・研修なども実施できるリフレッシュスペースを設けることで、社内外のコミュニケーションを活性化させています。

※参照:事例・実績|グローバルセキュリティエキスパート株式会社

双信電機株式会社

双信電機株式会社様は、本社移転を機に、エリアが明確に分かれていた営業部門と管理部門を同一フロアで運用するレイアウトへ再編し、社員の交流を促すABWへと大きく舵を切りました。企業理念である「輪・和・話・環」をモチーフに、エントランスから執務エリアへとつながるデザインを採用しています。

窓側にソロワーク席や昇降テーブルを設置したほか、オープンミーティングスペースを追加し、部署や役割を超えて縁が重なりあう自然なコミュニケーションを生み出す空間を実現しています。

※参照:事例・実績|双信電機株式会社

まとめ

ABWは、業務内容や気分に合わせて働く場所を自律的に選択するワークスタイルです。多様な環境を活用することで、個人の生産性を最大化させる狙いがあります。

自社の目的を明確にした上で、現状の課題に基づいたオフィス設計やルール作りを進め、従業員がより創造的に働ける環境を構築しましょう。

清和ビジネスでは、豊富な実績をもとに、企業の課題解消に向けたオフィスデザインやレイアウト設計から、内装・通信・設備工事、ICT導入支援までワンストップでサポートしています。Well-beingや健康経営の観点を取り入れた提案を強みとしており、働く人の心身の健康維持や心理的安全性の向上にもお役立ていただけます。

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