近年、オフィスの快適性や社員の健康に焦点を当てたWELL認証という認証が注目を集めているのをご存知でしょうか。
清和ビジネスでは2020年にWELL認証のゴールドを取得し、この知見をもとにお客様のオフィス改修にも「WELL」の視点を取り入れたご提案をさせていただいております。この「WELL認証」、国際的な建物・室内環境評価システムのことで、海外ではすでに多くの建物やオフィスが認証を受けており、健康経営の推進、企業ブランディング、離職率の減少といった観点から、国内でも知られるようになりました。
健康への意識が高まると同時にオフィスの在り方を見直す企業が多い今、注目を集めているWELL認証について、概要や認証取得のメリット、取得までのステップをご紹介します。
WELL認証とは
WELL認証は、健康・快適性に焦点を当てた国際的な建物・室内環境評価システムです。2014年に創設されたもので、取得にあたってはWELL認証を統括している機関「国際WELLビルディング協会(IWBI)」に登録します。
日本でのWELL認証取得サポートを手がける「一般社団法人グリーンビルディングジャパン」によると、2021年9月時点でアメリカやイギリス、中国など68カ国、9833件がIWBIに登録しており、30カ国486件が認証を受けているとのことです。日本では、12件が認証済みです。
そもそも、WELLとはどんな意味なのでしょうか。
IWBIのホームページには、「WELL is the leading tool for advancing health and well-being in buildings globally.(WELLは、建築物において健康と福祉を推進するための世界的なリーディングツールです)」と記載されています。
また、1946年には世界保健機構(WHO)憲章前文にて「Well-being」という言葉が用いられています。「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.(健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます)※」。※訳は公益社団法人日本WHO協会
これらのことから、WELLはWHOが定義する「健康」を実現できる建物・室内を目指していくことであるといえるのではないでしょうか。建物の環境について認証する制度はこれまで日本ではCASBEE、米国にはLEEDなどがありましたが、後述の評価項目のコンセプトに「こころ」「コミュニティ」があることから、より建物で過ごす人にフォーカスした認証制度であるという見方もあります。
WELL認証には「WELL v2」と「WELL Health-Safety Rating」の2種類があります。大きな違いは、評価基準と審査手順、期間にあります。
WELL v2は空間を総合的に評価します。取得には書類審査と現地調査が必要で、1~2年ほどで取得可能です。
一方、WELL Health-Safety Ratingは感染症、災害対策の評価に特化しています。書類審査のみで取得でき、取得までの期間は半年ほどです。
WELL認証の評価項目と10個のコンセプト
それぞれの詳しい評価項目について見ていきましょう。まずはWELL v2の評価項目です。下記10のコンセプトをもとに評価されます。
それぞれのコンセプトでは評価項目が設けられており、「必須項目」「加点項目」に分けられます。例えば「空気」では、必須項目は「空気室」「禁煙環境」など4項目、加点項目は「空気質の向上」「換気の設計の強化」など10項目が評価項目となります。取得に当たっては必須項目を全て満たしたうえで、加点項目を満たして点数を獲得していきます。10のコンセプトの最大評価得点は100点です。
また、10コンセプトに加え「イノベーション」というコンセプトも設けられています。イノベーションは10コンセプトのどれにも当てはまらない項目で申請者が独自にアピールでき、10コンセプトの最大評価得点とは別に最大10点が加点されます。具体的な評価項目については以下の表の通りとなります。
合計得点によって認証レベルが異なり、80点以上であれば「プラチナ」、60点以上であれば「ゴールド」、50点以上であれば「シルバー」、40点以上であれば「ブロンズ」が取得できます。
WELL Health-Safety Ratingについて
続いて、WELL Health-Safety Ratingについて見ていきます。
同認証システムは、新型コロナウイルス感染症禍で安全な建物であることを示す基準を設けようと、2020年6月に創設されました。WELL v2と同様に下記のようにコンセプトが設けられています。
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洗浄および消毒の方法
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緊急事態準備プログラム
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保険サービスのリソース
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大気および水質管理
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利害関係者の関与とコミュニケーション
5コンセプトそれぞれに評価項目が設けられており、洗浄および消毒の方法では「手洗いのサポート」「表面接触の削減」「洗浄方法の改善」「望ましいクリーニング製品の選択」「飛散粒子吸入機会の削減」となっています。5コンセプトのほか、WELL v2と同様「イノベーション」のコンセプトも設けられています。全コンセプトで15項目以上を達成すると取得となります。
前編ではWELL認証の概要、評価項目、コンセプトについて説明いたしました。後編では、WELL認証を取得するメリット、取得までの流れについて解説いたします。