6つのエリアに散りばめられたコンセプト
同社の新オフィスは6つのエリアに分かれており、それぞれのエリアごとで健康に配慮したさまざまな工夫が伺えます。健康への施策は25個にも及びます。
エントランス
まずは、エントランス。入るとすぐに社訓とともに道のアートが見えます。また、同社の歴史についての展示もあり、同社が大切にしているものを発信する場となっています。
エントランス付近
エントランス付近には会議室が3つ設けられています。CWXOオフィスの一人で、同社疾病予防事業部付の花岡佐保さんによると、「以前は10部屋ぐらい会議室が設けられていた」といいますが、社員の会議室の利用状況を調査した上で最適な数としました。
オアシス
オフィスのほぼ中心部に位置する社員のリラックスエリア「オアシス」には、ソファや最新のコーヒーマシンなどを設置。社員同士が自然と集まる場となるようデザインされています。
充実しているのはインフラだけではありません。健康に良い総菜や弁当などの販売コーナーも設けられています。総菜は100円で購入でき、多くの社員が頻繁に利用しているといいます。
HKD GYM
次に、体を動かすための設備が充実している「HKD GYM」。業務用デスクとしても使用できる卓球台のほか、ペダルをこぎながら仕事もできるデスク付きバイクなどが設置されています。ぶら下がりながら打ち合わせできるスペースもあり、隙間時間に体を動かせる仕組みが構築されています。
サーキット
緑豊かなエリア「サーキット」は、主に打ち合わせのために設けられたエリアです。デスク業務は座りっぱなしになってしまいがちですが、昇降机を設置することで立ったままミーティングができるようにしました。加えて、エリアでは少人数のセミナーやイベントが実施できるよう配慮されています。
アトリエ
天井のイラストが特徴的なエリア「アトリエ」にも、健康に配慮した工夫がみられます。イラストはオフィス周辺の地図を描いたもので、作業中にイラストを見るために上を向くことで、首周りを自然と動かせます。また、イラストには徒歩圏内にある商業施設などを掲載しており、ウォーキングを促進する狙いもあるといいます。
パーク
日比谷公園が見えるエリア「パーク」には、打ち合わせのための二人用個室ブースや一人用の個室ブースが設けられています。全体的にオフィスは開放的ですが、集中できるエリアを設けることで、メリハリをつけて業務にあたることができます。エリア付近には大きな鏡が特徴的なストレッチコーナーも設けられています。医療専門職が監修したストレッチの指導パネルもあり、気軽に体を動かせる場所になっているのです。
オフィスに対する社員満足度が向上
CWXOオフィスの一人で、同社経営企画部ブランディング・広報室長の瀧澤かほるさんは「意識せずとも健康に良い行動を取っているような仕組みを意識しました」と説明します。
オアシスのスペースを取り囲むように床に足跡がプリントされている「足跡ナッジ」に、チームの思いが込められています。身長150、160、170、180センチ台の人のそれぞれの平均歩幅に、プラス10センチ幅で足跡がプリントされており、広い歩幅で歩くことを推進するものです。足跡に合わせて歩いている社員もよく目にするといいます。
足跡ナッジや、アトリエの天井のイラストは特注のもの。CWXOオフィスの津久井理紗さんは「清和ビジネスさんには弊社が実現したい施策に関する要望を種々お伝えさせて頂きました。業者さんと粘り強く交渉にあたってくださったと思います」と笑顔で話します。
CWXOオフィスの最高責任者である川杉貴代さんは「チームとして『こうしたい』『ああしたい』という思いはあったが、デザインに関しては素人です。その部分で清和ビジネスさんはプロなので思い切って任せました」と振り返ります。
社員の健康を促進させる仕組みを取り入れた結果、社員のオフィスに対する満足度も向上しました。社内調査によると、「リラックスのしやすさ」「気分転換や息抜きのしやすさ」やコミュニケーションの項目で満足度が大きく向上したそうです。また、「新しいアイデアが生まれやすい環境になった」という声も社員からは多く挙がっているとのことです。
新たな場で挑む新サービス開発
新オフィスが誕生し、新しいアイデアを生み出すための環境が整いました。同社では、新しいデジタルプラットフォームによる新サービスの開発に着手しています。このサービスが目指すのは、企業の人事、健康保険組合と、加入している組合員それぞれを繋ぐ場の提供です。
企業人事と健保組合は「社員の健康を守る」という共通の目的を持っています。しかし、企業人事と健保組合は社員の健康についてそれぞれ違うデータを持っているため、それぞれ共有する場がありませんでした。
新しいデジタルプラットフォームが提供するデータベースでは、それぞれが持つデータを統合管理し、権限に基づいて適切にデータの出し分けを行います。結果、企業人事と健保組合が共同で、社員の健康のために働きかけられ、コラボヘルスに寄与できると考えています。
プラットフォームのエンドユーザーである社員向けには、アプリの提供を予定しているといいます。同社が発行してきた家庭医学書「家庭の医学」のアプリ版や同社コールセンターで受けてきた相談をまとめたQ&A集、医療情報の提供や健康に関するWEB面談機能、社員の家族も含めた健康セルフチェック機能、特定保健指導などが実装される予定です。
健康に配慮した仕組みが、どれだけ社員の健康維持に貢献しているかについても調べており、調査結果は今後サービス開発に生かされるといいます。
同社は70年以上、人々の健康に寄り添い続けてきました。創業時の思いを受け継ぎ、新たな場で次の一歩を踏み出そうとしています。