
鹿児島県に本社を構え、三菱地所グループの一社として、国産丸太の調達から製材・加工、製品の製造、販売までを一気通貫して行っているMEC Industry株式会社様。国産材を無駄なく活用できるようにCLTなどの建材を販売されています。
今回は「鹿児島湧水工場」にお伺いして、ご担当の那須さんと福田さんにCLTの魅力について伺いました。

目次
- 鹿児島県姶良郡湧水町に新会社を設立
- 注目の建材「CLT」
- CLTを使った床フロアユニット『(仮称)WOOD FLOOR UNIT 3.2』の魅力
- 床材だけでなく、他の用途開発も進めている
- 後編に続く CLT製造工場見学レポート
鹿児島県姶良郡湧水町に新会社を設立
――はじめまして!よろしければMEC Industryさんについて教えてください
福田:私たちMEC Industryは、「木(もく)」を活用する社会の実現を目的として2020年1月に三菱地所を中心とした7社による出資で設立されました。2022年6月より「鹿児島湧水工場」と「鹿児島湧水素材センター」を本格稼働しています。
出資各社の強みを活かし、自社で工場を持つことで、国産丸太の調達から製材・加工、製品の製造、販売といった川上から川下までのビジネスフローを統合し、中間コストを抑制したビジネスモデルを確立しました。
今回のインタビューが行われている鹿児島湧水工場は、廃校となった県立栗野工業高校跡地に立地しており、地域との密接なつながりを大切にしています。地域の未来を育むことを目指し、労働人口不足や地方創生といった社会課題の解決にも取り組んでいます。

鹿児島湧水工場の魅力:国内初の一貫生産工場※が地域雇用を支える
※2022年6月当時
――かなり広い敷地の工場ですね!
福田:鹿児島湧水工場は、製材棟と製造棟を備え、丸太の製材から製品の製造までを一貫して行える工場です。まず製材棟で丸太を製材し、その後、製造棟で製品が作られます。
鹿児島湧水工場から車で10分程度のところにある2万㎡の鹿児島湧水素材センターにて、原木の皮むきやバチ取りなどを行った後、丸太は製材棟(3,896㎡)に運ばれ、板材に加工されます。製品を製造する製造棟は短辺が約100m、長辺が約200mと非常に広いです。
従業員約130名のうち、9割が地元採用で、これまでは就業先が少なく都市部に流出していた地元の雇用の受け皿にもなっています。ちなみに、県立栗野工業高校出身者も数名働いているんですよ。

注目の建材「CLT」
――主力商品のひとつが「CLT」だとお聞きしましたが、どんなものなのでしょうか?
那須:CLTとは、「Cross Laminated Timber」の略で、木の板を各層で互いに直交するように積層接着した大判パネルのことです。
欧米では中高層建築への採用が進み、近年は日本国内でも注目が高まっている建材です。
※CLTの詳細については一般社団法人日本CLT協会のホームページをご覧ください。
手元のCLTは3層パネルで、厚さは12㎜、30㎜、12㎜の合計54㎜です。CLTは3層・5層・7層などの奇数層で構成されており、層数と厚みによって性能が変化します。CLTの大きな特徴は高い強度と性能安定性です。
このCLTの寸法は、497 ㎜×497 ㎜×厚み 54 ㎜、約6kg/枚で、1枚あたりの耐荷重は約5,000N(厚み44㎜のCLTの耐荷重は約3,000N)あります。

CLTを使った床フロアユニット『(仮称)WOOD FLOOR UNIT 3.2』の魅力
木の魅力を身近に感じられる『(仮称)WOOD FLOOR UNIT 3.2』
那須:最もご紹介したい製品はCLTを使った床フロアユニット『(仮称)WOOD FLOOR UNIT 3.2』という、フリーアクセスフロア(床下に電源や通信用の配線、さらに空調設備などの機器を収納することのできるフロア:通称OAフロア)です。
一般的なOAフロアでは、スチール床の上にタイルカーペットを敷いてしまうため床が目に触れることはありませんが、本製品は本物の木を感じる空間を実現します。

本製品を100㎡使用した場合、約3.2tの炭素固定(CO2換算)効果が期待される(※54mmのパネルを使用した場合)ため、名前にも3.2を入れています。

オフィスにも温かさと機能性をもたらす
――無機質になりがちなオフィスの床を木にすることができるのですね?
那須:はい。『(仮称)WOOD FLOOR UNIT 3.2』は床一面に美しい天然の木目が広がる高い意匠性を持っています。
また、CLTが持つ高い強度を活かした機能性、木材が持つ炭素固定効果により地球温暖化防止にも繋がる環境貢献機能を有した「新建材」で、新築建物だけではなく既存建築物の床面改修にも利用できます。

上の写真のように木板同士を突き付けることでCLTを床面に敷き詰めていきますが、敷込み時にパネル同士を突き付けることで突起金物がテーパーに乗り、篏合(かんごう)位置に導いてくれます。

――木製パネルの篏合のためにボタン状の突起金物を使うのは珍しいですね?
那須:はい。開発者の1人である青木という者が固定概念に囚われない自由な発想の持ち主で、ある日「床をボタンではめたり外したりできればいいよね」と思いついたそうです。
面白いのが、「ボタンで有名な会社はどこだろう?」とインターネットで調べあげ、ユニクロさんのボタンを製造している丸山金属工業さんを見つけて飛び込みで相談をしに行ったところです。先方も最初は「こんな相談は受けたことがない」と驚かれたそうですが、熱心に開発してくださり、製品化までこぎつけることができました。

このボタンのおかげでパネル自体が仕上げ材としても機能する様になり、オフィスでより木を感じながら仕事をしていただくことができるようになりました。
オフィスの床はメンテナンスがしやすいことも重要
――CLTにはコーティング剤を使っているのですか?
那須:はい。オフィスの床ですから、日常的にメンテナンスがしやすいことも重要です。
小学校の床などには一般的に塗料ではなくワックスが塗られていますが、ワックスのような厚い塗料を塗ってしまうと柔らかさがなくなるため、CLTにはどの塗料が最適かということを日々研究しています。

福田:鹿児島湧水工場の階段踊り場では、異なる塗料でコーティングした床を敷いて、汚れの度合いを確認したり、三菱地所の大手町オフィスでは複数の種類のイスを置いた際の傷のつき具合を確認したりするなど、販売前に1年以上の実証実験を行いました。
本製品には、株式会社リンレイさんと一緒に共同開発した、木目や手触りなど木の質感を生かしながらもメンテナンスしやすい天然木専用・オリジナルのコーティング剤を使用しています。
このコーティング剤はアクリル系ですが、CLTに触れると天然の木であることが感じられ、木の匂いも楽しめる点が特徴です。
SDGsの達成にも貢献するCLT
――CLTはSDGsにも配慮しているとお聞きしました
福田:コーティングは施されていますが、一定期間使用したCLTのOAフロアには、傷や汚れがついてしまいます。しかし、CLTは木でできているため、表面を削ったり、ロール機械でなぐり加工を施すことで、再度異なる形で生まれ変わらせることができます。
また、イベントで使用して損傷が激しいCLTは、次のイベントのノベルティとして木製の鍋敷きにリサイクルし、配布する予定です。このアイデアは「かわいくてエコで良いね」と好評をいただいています。
CLTは木好きにはたまらない魅力がある
――木好きだからこそ見てほしいポイントがあるとか?
那須:これは完全に木好きの視点なので一般の方にご理解いただけるかは分かりませんが……(笑)
CLTは天然木を使用しているため、1枚として同じものはありません。それぞれのパネルには個性があり、見ていて飽きることがありません。
ちなみに、パネルは「流し」といって同じ向きで並べるのではなく、「市松」と呼ばれる方法で、隣り合うタイルの向きを90°変えて貼るほうが見栄えが良くなります。
また、目に触れる部分には接合部がわかりにくいように工夫されていますが、横から見ると「水平フィンガージョイント」と呼ばれる美しい結合部が見えます。いつかCLTを導入いただく企業のご担当者様には、ぜひ横からパネルをご覧いただきたいですね(笑)

『(仮称)WOOD FLOOR UNIT 3.2』の特長まとめ
――お話をお聞きしていると私も木が好きになってきました(笑)
改めて『(仮称)WOOD FLOOR UNIT 3.2』の特長を教えてください
那須:ありがとうございます!大きく4点にまとめさせてください。
- 不燃処理をせずCLTを”現す”
内装制限による制約を受けないため、不燃処理が不要。CLTを空間の意匠として”現す”ことが可能です。(※行政による確認が必要) - 木の良さに包まれる
木の質感を活かしながらもメンテナンスしやすいコーティング剤を採用。木目や手触り、さらには豊かな香りなど、空間全体を木の自然な空気感で満たします。 - 木パネルが仕上げ材&簡単施工
カーペットを貼らない。パネル自体が仕上げ材としても機能するように、表面に金物が見えない特殊な接合部&流通品に劣らない簡単施工を実現します。 - 高い炭素固定効果で地球環境に貢献
本製品100㎡使用した場合、約3.2tもの炭素固定効果(CO2換算)が期待されます。(※54mm厚の場合)
床材だけでなく、他の用途開発も進めている
――床材以外にはどんな箇所にCLTを使っていくのですか?
那須:国内にCLTを製造しているJAS認定工場は11社ありますが、弊社は単にCLTを製造するだけでなく、デベロッパーやゼネコンの視点を取り入れ、さまざまな知識を集めて新しいことに挑戦している点が強みと言えます。
新しい視点で木に付加価値を加え、既存の枠組みにとらわれることなく新しい商品を生み出し、お客様に貢献していきたいと考えています。
例えば、RC造の中でCLTを活用できるようにしたり、ワークブースや集中ブースといったボックス、パーテーションをCLTで作ることなどにチャレンジしていきたいと思っています。

福田:また、床と天井にCLTを、壁に2×4パネルを活用したユニットを工場内で製造し、現場で組み立てるプレファブリケーション工法を用いて、高性能・高品質ながら低価格な規格型商品を開発・供給する「MOKUWELL事業」も行っています。

福田:工場で部材を製造し、組立まで行っているため、建築現場での施工手間を省き、工事期間の短縮が可能になります。また、大部分を工場内で製造することで、品質の安定性も高まります。これまでの2年間で、約60棟を販売しています。
木を使って製品を作るという点では他社と共通していますが、弊社の場合、サステナビリティへの貢献も重要視しています。
例えば、鹿児島県を中心に南九州産材、特に国内利用が進んでこなかった「大径木」を活用し、年間55,000㎥の国産木材利用を実現しています。
地方で育った木を、地元や都市部で使ってもらうことで炭素固定にも貢献できますし、地元の生産者からは、「地産地消に繋がって嬉しい」「行き場のなかった木材の活用が進んでいる」「バイオマス発電等だけでは無い大径木の利用法がみつかるのはいいこと」などの声をいただいています。
MEC Industryでは、今後も継続的に環境貢献、社会・経済への貢献、地域資源の活用、雇用の創出など、新しい工場の在り方を目指し、地方創生に取り組んでいきたいと考えています。
後編に続く CLT製造工場見学レポート
見学させていただいた鹿児島湧水工場については、後編でご紹介いたします。近日公開予定ですのでお楽しみに!
※今回ご紹介した『(仮称)WOOD FLOOR UNIT 3.2』は現在、受注受付中です。(2025年4月現在)
2025年秋に正式発売開始予定ですので、詳細は下記ホームページよりお問い合わせください。
〈インタビュー・撮影協力〉
MEC Industry株式会社
所在地:鹿児島県姶良郡湧水町木場3102
公式HP:https://www.mec-industry.com/
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