
「BCP対策はしているつもり…」「導入した」で終わってしまっていませんか?
企業ごとでBCP対策はさまざまかと思いますが、実際に災害が起こった時の初動対応はどの企業も同じです。
防災用品を、見せて、使って、備える──日常に溶け込む防災備蓄が、初動対応の質を変えます。
今回清和ビジネスのサテライトオフィス「UN:O」で開催した「防災フォーラム2025」では、特別セミナーとして高荷智也様をお迎えし、企業の防災・BCP対策についてご講演いただきました。
お話しいただいた講演内容をもとに、企業の最新BCPトレンドと、現場で役立つ備えのヒントについて、ご紹介いたします。
登壇者
高荷 智也 氏 (合同会社ソナエルワークス 代表|備え・防災・BCP策定アドバイザー)
「死なないための防災」と「中小企業のBCP策定」のポイントを体系的に解説するフリーの防災専門家。
堅い防災を分かりやすく伝える活動に定評があり、講演・執筆・メディア出演の実績も多い。
防災YouTuber、Voicyパーソナリティとしても活動する。1982年、静岡県生まれ。

目次
BCP対策とBCM対策
災害などで通常業務ができないときに備え、命や仕事を守るための計画を立てるのが、「BCP(事業継続計画)対策」です。
最近では、「BCP対策」だけでなく、「BCM対策(事業計画マネジメント)」という考え方があることをご存じですか?
- BCP(Business Continuity Plan):事業継続のための具体的な計画やマニュアル
- BCM(Business Continuity Management):BCPを含む、事業継続に向けた会社全体的な管理・運営
BCMは、従業員や顧客の命を守り、経営への影響を最小限に抑えるための準備や対応を、より広い視点でマネジメントする考え方です。
BCPの策定だけでなく、事業継続のために多角的な視点で管理していくことが求められています。
初動対応の備え
実際に災害が発生したとき、「準備した計画をどう実行するか」「すぐに行動に移せるか」を考えたことはありますか?BCP対策では、初動対応がスムーズにできる体制が整っているかも重要なポイントです。
ここでは、災害発生直後に必要な3つの行動要素と、オフィスでの備えについて解説します。
安全確保と環境整備
発災直後はまず、従業員の安全を確保し、オフィス環境を整えることが不可欠です。緊急時に従業員全員が協力し、迅速に環境整備を行える体制が整っている状態か、今一度確認してみましょう。すぐに導入できることや、「なるほど!」と思える工夫をいくつかご紹介します。
応急セットを常設
社内に応急手当セットを備えている企業が多いと思いますが、防災専用ではなく、事業所・フロア内に、「応急手当セット」として用意しておくことが重要です。
「ここに応急手当セットがあるので、風邪薬や、頭痛薬など必要な方は使ってください」と、広報をし、周知しておくことで、非常時でも、「あそこに応急手当セットがある!」とすぐに思い出してもらえるようになります。
防災用品・備蓄品は「見せて」収納
家庭と同様に、オフィスでも災害用品をどこに置いておこうか、収納に悩む方も多いと思います。最近では、あえて「見える場所」に保管できる防災グッズも増えています。
従業員が日常的に目にする場所に設置しておくことで、担当者以外でも防災用品を取り出しやすく、従業員同士で応急処置ができるようになります。


また、「分散展示」も初動対応の対策になります。たとえば、各デスクに1セットの防災リュックを置いたり、A4サイズの防災セットを収納棚に入れておくことで、備蓄倉庫から取り出してくる前に、各従業員がすぐに使うことができます。
従業員全員にしっかり共有をし、災害時にこそすぐ使えるように、積極的に見える化しておくことが大切です。
備蓄品の量と収納のバランス
災害時に帰宅できずオフィスに留まる可能性や、業務を継続する必要がある状況を想定すると、備蓄品の準備は欠かせません。ただ、収納スペースや人数に応じた量の確保を考えることは難しいですよね。
目安としては、「拠点にいる人数×3日分+10%」を用意しておくことが良いとされています。
たとえば、水は1人1日3Lが目安ですが、2Lペットボトルのほうが収納やコスト面を優先する場合適している一方、コップが必要になります。そのため、オフィスでは500mlペットボトルを必要な分だけ用意していくことが実用的です。
また、ウォーターサーバーや来客用の水なども活用できます。普段から従業員が使用している水も、備蓄品の一部として考えましょう。
>>その他さまざまな種類が揃うBCP対策用品についてはこちら
さらに、企業の防災備蓄として、福利厚生目的で用意している食品や、災害時も使える自動販売機を導入し、非常時にも使用することができます。
福利厚生として導入をすることで、従業員の認知度も高まり、喜ばれる施策となります。防災備蓄の収納に限りがある場合、普段から使えるものを備蓄品の置き換えとして併用してみるのも良いでしょう。
▽「設置型社食」について詳しい記事はこちら
実際にオフィスにいる人数の分が用意できているか、リモートワークなど、働き方の変化に合わせて見直しもしていきましょう。
情報収集と一次判断
災害発生時には、「何が起きているのか」「従業員の安全は確保されているか」「社内外の状況はどうか」、など、状況を把握し、一次判断する必要があります。
初動対応において、情報収集の必需品は「スマホ充電器とラジオ」です。
日頃からネットで情報収集するように、災害情報もネット、スマートフォンで多くの情報が得られます。
停電に備え、スマートフォンの充電用にモバイルバッテリーを準備する場合、用途にあわせて選ぶことが大切です。日々の業務でもモバイルバッテリーを使用する場合は繰り返し使える充電式が、防災用の備蓄品として用意する場合は乾電池式がおすすめです。
またオフィスの場合、多くのスマートフォンを充電したいという需要が高いため、ポータブル電源の導入も検討しましょう。

また、大規模災害や長期停電が発生した場合、スマートフォンが使えない可能性があります。そのため、ラジオを必ず1台は用意しましょう。
事前に「オフィス内で電波が入る場所」を確認し、万が一非常時にラジオが使えない場合の原因が、場所の問題なのか、電波が滞っているのか、すぐに判断できるように備えておくことも必要です。
意思決定とBCP発動
情報収集をした情報をもとに、「会社としてどう対応をしていくべきか」「準備をしていたBCPを発動するのか」といったスピーディーな意思決定が求められます。
経営層や担当者が集まって、話し合いをすることが理想的ですが、災害時には一同に集まることができない状況での、迅速な意思決定が必要になります。
その場合、「連絡手段はどうすべきか」「無線機なども買わなければいけないのか」と悩むかもしれませんが、結論として基本的には「スマートフォン」で十分対応が可能です。
スマホは繋がらないのでは?と思うかもしれませんが、停電していても半日程度は繋がることが多いとされています。
日頃から使っている「スマホを活用し、社内ツールで連絡」をする、日常と変わらないやり取りを想定して、準備をしておくことが大切です。
ただし、スマートフォンが手元にない、電波がつながらなくなってしまったときに備えて、無線機などの代替品の検討もしておきましょう。

また、あわせて重要になるのが、担当者が社内で明確に認識されているかも重要です。
「あなたは防災担当ですよ!」「防災対策本部の一員ですよ!」と認知させることを忘れないようにしましょう。
会社では、必然的に異動や組織変更があります。引継ぎができていなかったということがないように、定期的に体制の確認をしていくことが大切です。
まとめ
日頃から従業員が防災用品の場所を把握し、実際に使っているもの活用することで、初動対応がスムーズになります。
企業がBCP対策をすることは当たり前となりつつありますが、きちんと計画を実行できなければ、せっかく割いた時間と予算がもったいないですよね。
災害時には、担当部署や担当者任だけでなく、オフィス全体で協力することが何より大切です。
清和ビジネスでは、自社にあった防災対策を一緒に考え、企業ごとに合わせた防災セットをご提案しています。
今回の講演では、「なるほど!」と感じる内容が多く、実際にご来場いただいた皆さまにも伝わっているように感じました。防災対策について、入念に準備することも大切ですが、明日からすぐに備えられることのヒントとして、お役に立てれば幸いです。

〈執筆協力〉
合同会社ソナエルワークス 代表|備え・防災・BCP策定アドバイザー
高荷 智也様
公式HP:https://sonaeru.jp/
今の課題をなんでもご相談ください!

はじめてのオフィス移転もこれで安心!

常に働き方改革を実践するオフィスを体験できます!
