
ランディス&ギアジャパン株式会社様は、統合型エネルギー管理ソリューションの世界的リーディングカンパニーLandis+Gyr の日本法人です。
清和ビジネスでは、2022年のオフィス移転に続き、2024年末のオフィス移転も担当させていただきました。今回は、代表取締役社長の高見様に新オフィスのコンセプトや狙いについてお話を伺いました。ぜひご覧ください。

目次
- 拡大する組織のためのオフィス移転
- オフィス移転のテーマ「接縁(せつえん)」とは?
- 品質の高いサービスを提供するための仕掛けとは?
- “欲しい”よりも“必要”を形にするオフィスづくり
- 移転プロジェクトは代表自らが関わり、意思決定をする
- 会議室の壁の色やガラスにまで細心の注意を払う
- 水回りとカフェがつなぐ“接縁”の空間
- 仕事がしやすいようにソファテーブルは少し天板が高いものを特注
- 従業員がリラックスして仕事ができる環境をつくる
- 見た目より実用性——従業員目線で選ぶオフィス家具
- オフィス空間は「経営者のメッセージ」である
拡大する組織のためのオフィス移転
――本日はよろしくお願いします。今回オフィス移転をされた背景などをお聞かせいただけますか?
高見:はい、端的に申し上げますと、従業員と協力いただくパートナーの人数が増加し、既存のスペースでは対応しきれなくなったため、オフィスの移転が必要となりました。
2022年のオフィス移転時には、従業員数が約40名で、コロナ禍の真っ只中ということもあり、手探りの状態での対応でした。一方、今回の移転では、従業員とパートナーを合わせて約170名と、会社の規模が急速に拡大する中で、新たに加わるメンバーにも「会社がどのような事業を行っているのか」をしっかりと理解してもらえるようなオフィスづくりが必要だと考えていました。
結果として、今回のオフィス移転は大成功だったと感じており、非常に満足しています。

オフィス移転のテーマ「接縁(せつえん)」とは?
――オフィス移転が大成功されたとのこと、おめでとうございます。今回の移転テーマはどのように設定されたのでしょうか?
高見:はい、今回のテーマは「接縁(せつえん)」にしました。会社の成長に伴い人が急速に増えている中で、日本家屋の縁側のようにオフィスが完全には仕切られていないつながった空間にすることで、全体の雰囲気が分かったり一体感を持ったりすることができるようにしたい、という想いを込めました。
オフィス全体をクローズドにしすぎない空間にすることで、違うセクションのメンバーがどのような仕事をしているのか、どのような議論をしているのかが自然と耳に入ってくるようにしました。
これは、新しいメンバーでも会社の方向性や雰囲気をつかみやすくすることを狙いとしています。

例えば、社内用会議室はクローズドな空間を多く設けるのではなく、あえて壁のない開放的なデザインにしました。壁がないため、会議の声が周囲の業務を妨げないよう注意が必要ですが、従業員同士が自然に接する機会を増やすことを目的とし、このような形に落ち着きました。

会議室はカーテンで仕切られており、カーテンを開けるとすぐに隣の部屋とつながります。
移転当初は「壁がないと周りに会議の声が漏れ落ち着かない」という声もありましたが、「業務中の会話は、周囲に聞かれて困るような内容ではないはず」というのが経営者の本音です。
もちろん、人事関連などの機密性が求められる話はクローズドな環境で行いますが、それ以外の内容については、オープンに話すようにしています。
このようなオープンな空間づくりこそが、自社らしさを表現できているのではないかと考えています。
品質の高いサービスを提供するための仕掛けとは?
――オフィスづくりでこだわられた点をお聞かせください。
高見:こだわった点は大きく2つあります。
1つ目は、「高品質なサービスを提供するために、従業員が自ら必要なことを考えられるようなオフィスにすること」です。
弊社はインフラ関連の事業を展開しており、常に高品質なプロダクトやサービスの提供が求められています。その品質を実現するために何が必要か――そのヒントとなるのが「接縁(せつえん)」という考え方です。
社歴の浅いメンバーが多い中で、どうすれば協力し合いながら高品質な仕事ができるかを考えた結果、壁を多く設けないことで自然な協力関係が生まれると考えました。
弊社では、会社のフィロソフィーを朝礼や定例ミーティングで繰り返し伝えることはしていません。その代わりに、社員が日々、業務をする環境が会社の価値観を体現したものであることの方が重要と考えました。

製品の品質を上げるための地道な試験を繰り返す為のラボ設備も、機能や安全面だけを考えるとオフィスの角や奥に配置されがちです。そこは、敢えてこの地道な活動を会社の技術と価値観の象徴として、オフィス中央のすべての社員から見えるところに配置して、日々の品質向上の地道な活動を可視化しています。
代表である私が朝礼で理念を語る代わりに、オフィスの構造そのものが会社の想いを伝えるように設計しています。
“欲しい”よりも“必要”を形にするオフィスづくり
高見:こだわった点の2つ目は「従業員には”欲しいもの”ではなく、業務をするうえで”本当に困っていること”を聞き、つくること」です。
オフィス移転に際し、従業員に“欲しいもの”を尋ねると、最新の機器や設備など、目新しさを重視した要望が多く挙がります。こうした“欲しいもの”や機能をすべて実現しようとすると、スペースや予算がすぐに不足してしまいます。
そこで弊社では、以前の執務環境で本当に困っていることや課題を聞き、その課題を解決できるようなオフィスづくりをしました。具体的には「収納スペースが足りない」「集中して業務ができる環境が少ない」「協力会社のパートナーも社内に入るのでアクセスエリアを分ける必要がある」といった課題が挙げられました。
トレンドを意識しすぎてしまうと、一過性で終わってしまうこともあります。長時間過ごす、毎日通うオフィスということを考えると、今困っていることの解決ができるオフィスをつくる方が、生産性高く仕事ができますし、それが高品質のサービス提供につながると信じています。
執務エリアについても集中できるスペース、コラボレーションできるスペース、パートナーの業務スペースなど、用途別にゾーニングをしています。また、ストラップの色を分けることで社内で働く仲間の属性が視認できる仕組みも導入しています。その結果、パートナー含め従業員同士のつながりを意識したデザインと、機能性を両立したオフィスをつくることができました。
移転プロジェクトは代表自らが関わり、意思決定をする
――オフィス移転の推進にあたり、プロジェクトメンバーなどを任命されたのでしょうか?
高見:いえ、特にプロジェクトメンバーは決めず、私と総務部などの中心メンバー、清和ビジネスさんやその他の支援企業の皆さんと議論を重ねながら、さまざまな意思決定を行いました。定例会は約7カ月間、週1回程度のペースで開催しましたが、それ以外にも必要に応じて都度集まり、アイデア出しを行っていました。
従業員の代表を集めて数回ヒアリングを行いましたが、多くのメンバーを巻き込むよりも、少人数の従業員に任せてプロジェクトを進めたほうが、より良いものができるのではないかと考えています。
従業員同士でオフィス移転の提案をコンペ形式で募り、優れた提案をした従業員にプロジェクトをリードしてもらうという方法も有効だと思います。
今回の移転でも、清和ビジネスさんからは多くの提案をいただきました。単に提案をするだけでなく、アイデアや意見を率直に伝えてくださったので、大変助かりました。

会議室の壁の色やガラスにまで細心の注意を払う
――オフィスの「色」についてもかなりこだわられたとお聞きしました。
高見:はい、色味については、コーポレートカラーの緑に加えて、木目とグレーを多用しました。
この会議室の壁の色はブルーグレーです。移転当初はもう少し明るい色の壁にしていたのですが、落ち着きを持たせるように、グレーを入れて塗りなおしてもらいました。

それぞれの会議室には「Eiger(アイガー)」「Matterhorn(マッターホルン)」など本社があるスイスの山の名前を付け、また壁の色を変えるようにしています。山は頂点を目指して登るイメージがあるので「社員が協力して頂上を目指す」という思いを込めたものです。会議室Aのような番号や記号ではなく、「Eiger」などの山の名前を付けることで、親しみが湧きやすくなります。また、「Eigerは青い壁の会議室」といったように、視覚的な特徴と名前が結びつくことで、自分が今どこにいるのかをすぐに認識できる点も利点です。
さらに、お客様用の会議室はガラス張りにしていますが、内側からも外側からも“絶妙に見える”ように透過性を調整しています。会議中であっても常に誰かに見られているという意識を持つことが、高品質なアウトプットを生み出すために重要だと考えています。
水回りとカフェがつなぐ“接縁”の空間
――オフィス移転をされる他の企業におすすめしたい機能があるそうですね?
高見:はい、「水回り」と「カフェスペース」はオフィス内に設けることをおすすめします。
コロナ禍が明けたとはいえ、いつでも気楽に手などを洗えないオフィス環境は不十分だと感じています。水回りの整備やカフェスペースの設置には、かなりの追加予算が必要でしたが、衛生面の向上と従業員同士のコミュニケーション促進を考えれば、必要不可欠な投資だと判断しました。

水回りは、照度を抑えつつ色温度を高めることで、リラックスできる空間に仕上げました。また、環境負荷に配慮して紙カップを廃止し、各自がマグカップを持参するスタイルに変更しました。これは、スイス本社や米国アトランタのリージョンヘッドクオーターのアイデアを、日本にも取り入れました。
社員には、社名をカタカナのロゴ調にデザインしたマグカップを配り利用してもらっていますし、これは海外オフィスへのお土産としても大変喜ばれました。
マグカップ以外にも、オフィス移転のタイミングでTシャツなどのオリジナルグッズを制作し、従業員に2点ずつ配布しました。「気に入ったので、購入したい」という声も上がるほどで、従業員の帰属意識を高めるうえでも、オリジナルグッズの制作は非常に有効だと感じています。

カフェスペースには、ドリンクディスペンサーや、スナックが購入できるミニバーも設置しました。海外オフィスからの出張者も、QRコードを読み込むことで自身のスマートフォンから決済できるため、使いやすいと好評です。

ちなみに、カフェに設置している時計は、スイスの鉄道時計です。時計と鉄道という組み合わせは、日本と並んでスイスが世界に誇る品質や正確性を表現していますが、リラックスする空間なので、押し付けがましくなく表現できるものとして選んでいます。オフィスの小物も木のおもちゃ、ほっこりする和物等を選んでおり、職人の手による工芸品を連想させつつも「何だかほっこりする感じ」を重視しています。
細かい工夫に思えるかもしれませんが、こうした仕掛けによって従業員が自然とカフェに集まり、お弁当を一緒に食べたり、コーヒーを飲みながら会話を楽しんだりする機会が増えています。これこそが、今回のオフィスづくりのテーマとして掲げた「接縁(せつえん)」の実現につながっていると感じています。
仕事がしやすいようにソファテーブルは少し天板が高いものを特注
――このカフェには人が集まる”秘密”があるとお聞きしました。
高見:はい、このカフェスペースのテーブルは特注で天板が少し高めのものを作ってもらいました。一般的なソファ席に置いてあるテーブルにパソコンを置くと前かがみになりがちですが、ここでは少し高めのテーブルと電源を用意したことで、ストレスなくパソコン作業ができます。

カフェスペースは、ただリラックスしてお茶を飲む場所ではなく、そのまま他の従業員とディスカッションをしながら仕事ができるように設計しています。これは、従業員の声を丁寧に聞き、型にはまらないオフィスづくりを目指したからこそ生まれたアイデアです。
新しく仲間として加わるメンバーが、少しでも早く会社に馴染めるようにするための仕掛けとしても、非常に有効だと感じています。
従業員がリラックスして仕事ができる環境をつくる
――従業員の皆さんがリラックスして仕事に臨める環境づくりを意識されていると伺いました。
高見:はい。新設のオフィスというと、つい最先端の設備を取り入れたくなりますが、例えば病院の手術室のように無機質で緊張感のある空間にしてしまうと、かえって集中しづらくなってしまいます。
短時間の作業であれば集中できるかもしれませんが、5年、10年という長期にわたって大きなプロジェクトに取り組むには、リラックスできる環境のほうが、より良いアウトプットにつながると考えています。
そのため、植栽を多く取り入れ、北欧風のイメージでオフィスをデザインしました。最先端の雰囲気よりも、ミッドセンチュリー調の温かみのある空間のほうが、従業員が自然体で仕事に向き合えると感じています。

先日、従業員のご家族を招いて会社に遊びに来てもらう「ファミリーデー」を開催したのですが、小さなお子さんたちにもこのオフィスは大好評で、1日中楽しんでくれていました。特にカフェスペースは大人気で、「やはり生命あるものは水場に集まるのだな」と改めて実感しました。
見た目より実用性——従業員目線で選ぶオフィス家具
――その他、移転時に重視されたことはありますか?
高見:特に重視したのは、オフィスのショールームなどに積極的に足を運び、“物を見極める力”を養うことです。
清和ビジネスさんのオフィスを見学したり、家具のショールームに何度も足を運び、実際の椅子に片っ端から座ってみるなど、徹底的に体感することを心がけました。
見た目がかっこいいオフィスでも、従業員が仕事をしづらい環境では意味がありません。特に、1日に8時間も座る椅子の選定は非常に重要です。従業員をショールームに連れて行き、実際に椅子に座ってもらいながら、商品やグレードを何度も調整しました。
弊社では、品質の高いサービスを提供することを大切にしていますが、椅子の座り心地は、従業員のパフォーマンスやアウトプットの質を左右する要素として、非常に重要だと考えています。
オフィス空間は「経営者のメッセージ」である
――最後にこれからオフィス移転をしようとされている方にメッセージをお願いします。
高見:オフィスがどんな価値を生み出す場所なのか――それをしっかりと体現することが何より重要だと思います。経営者の想い、また会社の価値観や目指すところを従業員に伝えるのは、総務部の仕事ではなく、経営者自身の役割です。
私は、オフィス環境やオフィスデザインは、経営者から従業員へのメッセージそのものだと捉えています。従業員同士の協力を重視するのであれば、協力しやすい空間を。クリエイティブな発想を求めるのであれば、アイデアが湧きやすい新しい環境を整えるべきです。
経営者として、従業員に何を伝えたいのか――総花的なアプローチではなく、経営としてのテーマを数個にしぼって明確にし、従業員が多くの時間を過ごすオフィスと言う空間表現を通じて伝えられることが、移転成功の鍵だと思います。

〈インタビュー・撮影協力〉
ランディス&ギアジャパン株式会社
所在地:東京都千代田区丸の内2丁目1番1号明治安田生命ビル7階
公式HP: https://www.landisgyr.com/
ランディス&ギアジャパン様のオフィスは下記からご覧いただけます!
今の課題をなんでもご相談ください!

はじめてのオフィス移転もこれで安心!

常に働き方改革を実践するオフィスを体験できます!
