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【学校法人順天堂】新たな象徴にふさわしい最先端研究棟に価値ある食堂施設を実現

順天堂の「伝統」と「革新」を融合し、世界へと羽ばたくイノベーションコモンズの実現を目指した新研究棟。その中核にふさわしい食堂施設とは何か──。大学側のプロジェクトチームと清和ビジネス、ゼネコンが一体となり、コンセプトに忠実な空間づくりを徹底的に追求。細部までこだわり抜いたその答えとプロセスを、プロジェクトを牽引したお二人に伺いました。

▼学校法人順天堂の食堂については下記事例ページも併せてご覧ください。

https://seiwab.co.jp/case/detail059

(写真左から 学校法人順天堂 大学キャンパス・ホスピタル再編事業事務局 植村 様/石原 様)

目次

創立175周年記念事業として新研究棟と食堂施設の計画が始動

――食堂リニューアルに至った経緯について教えてください。

植村:リニューアルをした食堂がある新研究棟(7号館)は、順天堂創立175周年を記念した「キャンパス・ホスピタル再編事業」の集大成として、お茶の水キャンパス再編の最終プロジェクトに位置づけられています。

「順天堂の伝統」と「順天堂の革新」──先人の思いを継承しつつ、世界を見据えた最先端の教育・研究施設を目指す革新的な取り組みでした。臨床と基礎研究の垣根をなくし、視線が抜ける透明性の高い空間設計、中央階段で多層に連続するオープンラボなど、国内でも類を見ない構成です。

研究者同士の交流や機器の共有を促進し、偶発的な発見=セレンディピティを生むことで、世界をリードするイノベーションコモンズを実現することを目指しました。さらに、500人規模の講堂を備え、病院機能を持つ1号館やB・C・D棟とも連携。順天堂の新たな「顔」となる研究棟とともに、食堂施設の計画も進められました。

石原:この本郷・お茶の水キャンパスは順天堂にとって特別な場所でした。明治時代に建てられ、順天堂の象徴であった「順天堂醫院旧本館」のファサードを復元することになりましたが、当時の資料があまり残されていない中、素材や意匠に至るまで何度も協議が重ねられました。

その、歴史を刻む象徴的な外観を再現した建物内にできる食堂施設ということですから、気持ちも引き締まります。

一方で、創立175周年の節目を迎え新たな時代の順天堂にふさわしい食堂をつくりたい──

そうした想いが、プロジェクトメンバーの熱意となって食堂施設計画を後押ししました。

多様なニーズに応えるため学内アンケートと事例研究を徹底

――プロジェクトはどのように進められたのでしょうか。

植村:まず、新食堂の主な利用者は「研究者・教職員・大学院生」としました。学生食堂とは異なる位置づけです。プロジェクトメンバーは各部署から選出し、性別・年代の偏りなく若手の意見も反映し、公平性を重視した体制を築きました。

医師・看護師・研究者など職種も多様なため、メニューや利用時間、空間の雰囲気などのニーズを把握するために学内アンケートを実施しました。

石原:今回の食堂計画は、順天堂の歴史的転換期にふさわしいものにするために、単なるリニューアルではなく、「働く人にとって理想の食堂とは何か」を徹底的に追求する必要がありました。

そのため、食堂事例の見学については、先進的な取組をされている大学を10校以上、さらにさまざまな業界にわたる大手企業を10社以上、自治体や行政機関などの食堂を見学させていただきました。主に空間設計・家具配置・動線・居心地、さらには提供メニューなどを分析し、プロジェクトメンバー間で議論を重ねました。学内のWEBアンケートでは600件以上の回答を得て、多角的な視点から利用者のニーズ分析を行いながら、施設のコンセプトワークを進めていきました。

コンセプトは「斬新・快適・静かで落ち着いた空間」/順天堂らしい空間を細部まで設計

コンセプトに基づき動線・レイアウトも考慮された空間設計

――空間設計はどのように決められたのでしょうか。

植村:新研究棟の2階にダイニング(食堂)、1階にカフェを設置しました。高層階の研究開発エリアとは異なり、低層階はリラックスできる落ち着いた空間とし、研究者同士の交流や来客対応にも対応できる、本物にこだわった上質で居心地の良い空間づくりを目指しました。

食堂は単なる食事を摂るだけの場所ではなく、部門を超えた多様な交流の場であり、RechargeやWell-beingといった観点からのリラックス環境や健康的なメニューなどを提供して、仕事の生産性を向上させることにも貢献していく役割を持っています。また、「上質でリラックスでき、居心地の良い、本物にこだわった斬新な空間」を実現するために、動線やレイアウトにも配慮し、滞留や騒がしさを感じさせない設計にしています。入室から配膳、席選び、食事、退室に至るまで通路に人が滞留することなく、また吹抜けやガラス壁、柱等を利用して空間全体における騒がしさや窮屈感を感じさせずに、開放的で、人が自由に、快適に交流できるように目的や利用者の特性に応じてエリアやスペースを区切るなど、プライベート感があり落ち着ける雰囲気も大切にしたレイアウトを考案しました。

複数人で話しながら昼食をとれるオープンな空間づくり。個人でリラックスできる窓際スペースも設置。
区画されたスペースでも個人でリラックスすることができる

学内アンケートの結果を反映し順天堂ならではの居心地の良さを実現

植村:さらに、研究施設や医療施設に隣接する食堂として、医療現場や研究関連の話も気を使わないで会話ができるようにテーブル間の距離を綿密に計算しました。一定のプライバシーやセキュリティを保てるように計算された家具の配置や設えとなっています。

中には医療従事者の方から「短時間で移動して食事が摂れるようにできないか」というご意見もあったため、隣の病院棟と新研究棟を渡り廊下でつなぐ建築構造を取り入れ、移動時間を含め短時間で食事をしたい人向けのエリアを設けるなどニーズ合わせた環境も実現しました。

石原:学内アンケートの結果も空間設計にしっかりと反映しています。
利用人数や関係性に応じてテーブルの形状や配置を工夫し、個人でもグループでも快適に過ごせる空間に仕上げました。

一般的には食堂施設というと効率重視で、一律的であまり変化のないレイアウトや家具配置になってしまいがちですが、今回私たちは、順天堂で働く人たちの職場環境や生産性の向上、またワークライフにおけるQOL向上を目指して、ここ順天堂の食堂施設でしか味わうことのできない居心地の良さに細部にまでこだわりました。設置する家具については本物を追求した「木」の素材に徹底的にこだわり、リラックスできる、座り心地の良い椅子等をセレクト、その日の気分やメンバーなどによって利用する場所も変えられるように、インテリアのバリエーションにもこだわっています。

また、目には見えない“居心地の良さ”として、食堂内で流れるBGMが挙げられます。せせらぎのような優しい音はリラックス効果を得られることから、家具とのトータルコーディネートで重要な要素として考えました。また、景観上あまり目立たないように壁面に投影できる機能を持たせることで、グループミーティングや各部署でのイベント、土日の学会などでも積極的に活用されています。

このように新たな食堂施設には、多用途で活用できるさまざまな機能設計が盛り込まれています。

ランチタイム以外にも、ちょっとした気分転換や1人で集中したい時、またカジュアルな打合せ、各種イベントといった、さまざまなシーンで「利用したくなる」「行きたくなる」環境づくりや機能設計を盛り込むことで、当初の想定を上回る高い利用率を実現しています!

すべての工程に手をかける/本物志向が生んだ価値観の共有

最初から最後までこだわり抜いてプロジェクトを進行

――今回のプロジェクトにあたって、特にこだわった点はどのようなところでしょうか。

石原:今回のプロジェクトでは、食堂の運営事業者選定にあたり、10社以上の候補から実績やノウハウをもとに絞り込み、プレゼンや試食会を経て最終決定しました。空間デザインの事業者選定も同様に進め、最終的に清和ビジネスさんにお願いすることになりました。

実務が始まってからは、私たちの要望が予想以上に細かく、素材や仕上げ、機能に至るまで妥協せずに進める必要があるため、時には「この提案ではイメージが違います」と率直に伝える場面もありましたが、清和ビジネスさんはその都度、私たちの熱量を超える提案で応えてくれました。

私たちは「本物にこだわりたい」という言葉通り、床材には本物の木を採用したのですが、メンテナンスの都合上、お手入れがしやすい素材を選んだ方が良いのではないかという不安もありました。家具についても同様の不安がありましたが、清和ビジネスさんに相談したところ「経年変化による風合いの変化も楽しめる」と私たちの意見を後押ししてくれたときは、徐々に互いの価値観を共有できていくのを強く感じられるようになりました。

植村:このプロジェクトを一言で表すなら、「すべてに手をかけた」と言えます。

学内アンケートも、協力会社の選定もですが、皆さんに心から納得していただける「順天堂らしい新たな食堂」を実現するために、調査や分析、コンセプトワーク、デザイン設計、建築、内装、家具、施工などすべてのプロセスで徹底して妥協せず、私たちが求める「居心地の良い空間」を実現するためのベストアンサーを、どの局面においても追求してきたと言えると思います。そこにはプロジェクトに携わった全ての人の、いろいろな想いとアイデア、工夫が詰まっているのですよね。思い返せば、皆さんと一緒に作り上げていく中で、いろいろなことを語り合い、すべてについて語り尽くしたように思います。

さまざまなアイデアや想いが詰められた食堂レイアウト(総席数:170席)

空間価値を伝えるための“見える化”と最適なコーディネート力

石原:清和ビジネスさんの「家具メーカーの枠を超えた最適なコーディネート力」も大きな支えでした。家具も自由度の高い選択をしたかったので、見本品はすべて見学に行ったほどです。選んだ家具・什器がイメージする空間をスムーズに作り出してくれたのは大きなメリットでした。

さらに、このような大規模なプロジェクトでは、経営職階への承認をいただくためのプレゼンをいかに成功させるかも重要な業務です。

清和ビジネスさんには、デザイン設計や内装の検討段階からプロジェクトに加わっていただき、家具や素材選定、さらに運用方法の検討にまでご支援いただきました。また、これらを使用した空間づくりがなぜ重要で、それらがどんな効果をもたらすかをわかりやすく理解してもらうための重要なプレゼンシナリオやツール作成についても多大なご協力をいただきました。

空間イメージは、言葉だけではなかなか伝わりにくいものです。そこで、一目で理解できるイメージビジュアルや、レイアウト上での人の動き、利用者に高い満足度とポジティブな感情をもたらす要素──たとえば、順天堂で働くことへのモチベーションの向上やロイヤリティの醸成など──を的確に伝えるために、最適なプレゼンの素材資料を綿密にご準備いただきました。その結果、新たな順天堂にふさわしい食堂施設空間の価値をしっかりと共有することができ、プレゼンも無事成功させることができました。この点についても、心より感謝申し上げます。

多様な価値を盛り込んだ順天堂らしい食堂施設の完成

――今回の新たな食堂施設プロジェクトを通じて、これまでと変わったことや成功したポイントを教えてください。

石原:今回のプロジェクトは「こだわり抜いた、みんなが納得できた食堂」だったと思います。完成後、植村さんや望月さんをはじめとする清和ビジネス方々とも「やり残したことはないよね」と話し合えるほど、満足度の高い取り組みでした。

通常の食堂プロジェクトでは、コストや効率を優先することが多いかもしれません。しかし今回は、大学の顔となる施設をつくることが最も重要でしたので、本物で本質的な価値にこだわった空間にしたかったのです。清和ビジネスさんはその熱量に応えてくれ、大学側・利用者側の双方から高く評価される施設になったことが何より嬉しいです。

今後は「健康総合大学」として、健康メニューの充実にも力を入れていきたいと考えています。アンケートでも「野菜多め」「副菜の充実」といった要望が多く、現在のメニューでもそういった要望にお応えしているのですが、コロナ禍のために一時休止になっているサラダバーなどを見直して、働く人のWell-being環境の充実のためにも、ヘルシー志向で美味しい食の提供をさらに充実させていければと考えています。

植村:ダイニングとカフェのオープン以来、学内からの評判や反響も大きく、最初は行列ができるくらい話題になって、利用者からも高い満足度をいただいています。

最も大きな変化は「場所に困らなくなった」ことですね。打合せやランチミーティング、イベント、来客、広報対応、気分転換など、さまざまな用途に対応できる空間が生まれ、部署を越えた交流や学内外のつながりも広がっています。誰でも多様に活用できる新たな場を生み出し、さまざまな業務の生産性向上に貢献し、学内外のコミュニケーションや交流を高めることにつながっています。順天堂ならではの、なくてはならない場所ができたと思っています。

また、お客様をご案内する時なども空間設計のシナリオやいろいろなエピソードがあるため、ちょっとした情報提供や会話のネタにすることもでき、円滑なコミュニケーションにも役立っています。さらに教職員や臨床医師などの採用ブランディングやマッチングにも大きく貢献しています。今後はこの新研究棟と食堂施設が、順天堂のブランド発信拠点となり、社会の中での順天堂の価値をさらに高めていくことを目指していきます。

インタビューにご協力いただいた植村さん、石原さん。ありがとうございました!

〈インタビュー・撮影協力〉
学校法人 順天堂
所在地:東京都文京区本郷2丁目1番1号
公式HP:順天堂大学

編集後記

今回は、学校法人順天堂にお伺いし、植村様・石原様にインタビューさせていただきました。

ランチタイムに食堂を見学させていただいた際、利用者の過ごし方に合わせて、窓際のスペースやビッグテーブルなどが設けられており、それぞれが心地よく休憩できる空間になっていることに感動しました。利用者のニーズに丁寧に応え、順天堂様らしさを細部まで追求された姿勢が、空間の完成度と高い満足度につながっているのだと感じました。

改めまして、貴重なお時間をいただき、インタビューにご協力くださった植村さん・石原さんに心より御礼申し上げます。ありがとうございました!



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