新型コロナウイルス感染症によってテレワークが進み、会社に集まることが当たり前ではなくなった現在、「コミュニケーションを創出する」ことに大きな価値があると言われています。
そのような中、品川カルチャークラブ(品川CC)は地域密着型のスポーツチームとして活動し、その活動が品川の地域や企業に影響を与えています。
スポーツ×街×ビジネス
オフィスのある街に根付くスポーツチームの活動が、社員同士や企業間の交流につながる。そんな新しいスポーツと街、スポーツとビジネスの結びつきについて、品川CC代表取締役の吉田祐介さんにお話を伺いました。
地域の子どもたちとサポーターが一緒に応援する
──品川カルチャークラブ(品川CC)とはどのような組織なのでしょうか?
吉田:
2006年に設立した品川を活動拠点とした、総合型地域スポーツクラブです。
スポーツチームには、サッカー(フットボール)「品川CC横浜」「品川CCセカンド」、3X3バスケットボール「ワイルドキャッツ」、アメリカンフットボール「ブルザイズ」、チアリーダーズ「Rainbow Venus」の4つがあります。
──どのような活動を行っているのですか?
吉田:
スポーツの普及活動です。スポーツを通じて幸せな街を作ることを目標としています。
私は競技が好きなので最初は、勝ちたい、強いチームを作りたい、プロのチームを目指したいという気持ちで始めたのですが、勝ち負けは水モノです。
そんなことよりも我々のチームと一緒に応援してくれる。プロでもないのに人気がある。地域に密着したチームの方が面白いと思うようになりました。
強いチームを作りたいという気持ち以上に、地域の役に立ち、地域のインフラとなるスポーツチームを目指しています。
──品川に密着することや、品川との連携はいかがでしょうか?
吉田:
品川を拠点に選んだのは、単純に人口増加率が最も高かったからです。2023年度の港南小学校の全校児童は1321名と東京ではトップクラス。
世帯年収も高く、住みやすい。発展性もポテンシャルもあるエリアです。ただし、街の魅力に欠けている。スポーツをする場所もない。
そのためまず、場所作りからのスタートでした。
それが、2022年4月にオープンした天王洲アイル駅から徒歩5分にある複合型スポーツコート「SHINAGAWA CULTURE BASE」です。
ここはフットサル、バスケットボール、テニスのコートをレンタルして楽しむことができます。また、施設内に治療院も併設していて、コンディショニングにも活用できます。
品川との連携という意味では、品川区の行政とは連携して地域との関係を深めています。
地域の子どもたちがサポーターと一緒に熱心に応援してくれるなど、スポーツがコンテンツになっていることを感じます。
スポーツを通じて人と人を結ぶことに価値がある
──企業との関わりはどうでしょうか?
吉田:
日鉄興和不動産さんとの出会いが大きかったと感じています。
日鉄興和不動産さんがエリアマネジメントに力を入れている関係からイベントのお手伝いをするようになり、そこからさまざまな企業と知り合うことができました。
例えば、2023年5月には、日鉄興和不動産さんがラウンドパートナーとなり、「企業対抗3人制バスケットボール大会」を品川インターシティ/品川グランドコモンズにて開催しました。
品川CCは共催として運営を担当していたのですが、当日は参加する企業からたくさんの社員が応援に来ていたこともあり、多くの企業との出会いがありました。
──企業がスポーツと関わることで、どのような効果があるのでしょうか?
吉田:
一般的には、企業がスポンサーになり、ユニフォームに企業のロゴを入れることで広告効果を得ることがあります。
しかし、我々のような小さなスポーツクラブでは、広告価値はゼロに近いと思っています。我々としては対価を何かで返して行くことが大切だと考えています。
──その対価とは、具体的には何なのでしょうか?
吉田:
企業がスポーツクラブをスポンサードする理由は、イメージアップ戦略としてだと思いますが、私はスポーツを通じて人と人を結ぶことに価値があると考えています。
スポーツを起点に人が集まり交流が生まれ、そして交流からイノベーションが起きる
単純に会場で商品などのプロモーションをするのでも良いと思います。スポーツには、さまざまな活用方法もあります。
チームが弱くても、企業に対して価値は提供できると考えています。
なぜなら、観戦に来る人達は、勝つのはもちろん嬉しいけれど、勝ちを求めているのではなく、スタジアムの非日常の環境や友達がいる、ご飯が美味しいといったことに価値を置いているからです。
このことにもっとスポーツチームや企業は気付くべきです。ただ単にスポンサーとして付くという関係では、不況になると辞めてしまいます。そのような関係ではなく、別の切り口でスポーツを俯瞰することが重要だと思います。
企業にスポーツの活用方法はいろいろとあることをもっと知って欲しい
そのための普及活動はして行かなければいけないと思っています。
応援することでコミュニケーションが生まれる
──改めて企業がスポーツチームを応援する意味とは何なのでしょうか?
吉田:
ひとつは、スポーツを通じて共通用語を持てることだと思います。その共通用語でコミュニティができます。
事実、「企業対抗3人制バスケットボール大会」は、参加する企業のオフィスのある品川で開催されたので、選手は気軽に参加し、社員も気軽に応援に駆け付けることができました。
すると、大会に参加した企業は、企業内はおろか、別の企業の、今まで会わない人達が集まるコミュニティが生まれました。
応援することで社内外に友達が増える。応援する人、選手で一緒に飲みに行く仲間ができる。それが「応援価値」です。
プロの大会ではないので広告価値は極めて低い。けれど応援価値は高いということが言えると思います。
社内のコミュニケーションが取れないことが課題だと感じている企業は、スポーツを応援することでコミュニケーションが生まれる。そこが価値になります。
──スポーツをコミュニケーションツールとしてもっと活用すれば良いですよね。
吉田:
スポーツを趣味とすることで、同じスポーツを愛する者同士の仲間意識が生まれます。ただ、お金を出してスポンサーになるのではなく、一緒に観戦することで多くの人達とコミュニケーションを図ることができます。
さらに、観戦するだけでなく、プレイすると、もっと深いコミュニケーションが生まれます。
スポーツは、社員同士のコミュニケーションのツールになるし、企業と企業のつながり、品川地域の企業同士のつながりにも貢献します。
そうしたさまざまなつながりを、品川CCがハブとなって結び付けることができます。
──スポーツの可能性は無限大ですね。
吉田:
私は、スポーツで企業の課題を解決できると思っています。
企業の課題はさまざまなパターンがあります。内部のコミュニケーションに課題を持っている場合もあれば、一体感が欲しい場合もあります。その課題は経営者にヒヤリングしないといけない。
Jリーグでも野球でも、スポンサーである企業の課題をちゃんとヒヤリングしているのか?
スポンサードする企業の目的が採用なら、チームは採用力を高めないといけない。
我々は、企業が持つ課題を解決できる、さまざまな提案を持っています。
コミュニケーションが課題ならば、スポーツでどう、会社の雰囲気を良くして、コミュニケーションが活発になるようにできるかを考える。
採用に課題があるのなら、スポーツに取り組む姿勢でアピールする。
社員の健康増進や、健康維持に関心の高い企業であれば、社員がスポーツに参加する、ということもあり得ます。
ただ、企業が社員にスポーツへ参加させるには、運用に手間とコストがかかります。しかし、品川CCなら手軽に参加できる環境を用意することができます。
その他、「品川CCだとこういう価値を提供します」と言うことで、ソリューション営業になって行きます。
企業の課題はスポーツで解決できるということを私は、人生をかけて証明して行くことが使命だと考えています。
──ありがとうございました。