オフィスの移転は非常に大きな社内の変革であり、それだけに移転の担当者に大きな負担がかかってしまいがちです。オフィス移転を1つのプロジェクトとして捉えると、通常業務の他に大きなプロジェクトを1つ社内で抱えることになるでしょう。
そこで本記事では、オフィス移転のプロジェクトマネジメントとは何か、どんなことを行うのか、外部の業者に任せた方が良い理由について解説します。
オフィス移転のPM(プロジェクトマネジメント)とは
「プロジェクトマネジメント」とは、プロジェクトの進行を司ることを指します。はじまりはNASAの宇宙開発事業と言われています。その後ITシステム業界などの情報分野で使われるようになり、システムやWebサイトなどの完成に向けてスケジュールを組んだり、エンジニアのシステム開発のスケジュール管理などのマネジメントを行ったりすることを指す場合に使われていました。
これを踏まえて、オフィス移転を一つのプロジェクトとして捉え、オフィス移転の企画立ち上げからオフィス移転の完了、つつがなく業務を開始できるようになるまでの一連の流れを司ることを「オフィス移転のPM(プロジェクトマネジメント)」と呼んでいます。
オフィス移転のプロジェクトマネジメントには、以下のようにさまざまな業務があります。
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要件整理
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企画立案
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レイアウトの設計
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内装や什器、家具の用意
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プロジェクト全体の工程管理
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届出や申請などの各種手続き
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社内調整
このように大量の業務があるため、プロジェクトの全体を取りまとめる「プロジェクトマネージャー」が必要です。
オフィス移転のプロジェクトマネジメントの工程
オフィス移転のプロジェクトマネジメントには、以下の8つのステップがあります。
STEP1:オフィス移転の目的を明確にする
まず、何のためにオフィス移転を行うのかをはっきりさせましょう。例えば、現オフィスの契約切れや事業規模の変動における従業員の増減、立地が不便、リモートワークなど働き方の変化でオフィスの使い方が変わった、などが挙げられます。
移転によりどのような目的を達成したいのかが明らかでない場合、移転先で最適なオフィス設計ができず、今よりも働きにくい環境になってしまう懸念があります。現状のオフィスにどのような課題があるのか事前に洗い出し、移転後に実現したいこと(目標)をより具体的に挙げることが重要です。
オフィス移転の目的についてはこちらで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
STEP2:オフィス移転の計画を立てる
オフィス移転の計画では、以下のようなポイントをおさえましょう。
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現オフィスの賃貸契約の解約予告
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原状回復条件の整理・費用の算出
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プロジェクトの発足
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移転先の選定
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予算の検討
まずは旧オフィスの賃貸契約書の内容を再度確認し、「退去にあたって何日前までに解約予告をしなければならないのか」「敷金や委託金はいつ返却されるのか」などを把握します。
オフィスの移転はかなりのコストが掛かります。会社の大事な資産を使うことになるので、自社が困らないようにお金の流れはしっかり把握・管理しましょう。
次に、新オフィスの場所を決めましょう。前の工程で明らかになった目的に合わせて、場所や駅からの時間、環境、コストなども加味した上で自社に合ったオフィスを選定することが大切です。入居時期も忘れずに確認しましょう。
STEP3:社内への移転案内を作成し、周知する
オフィスの移転先が決まったら、社内向けの移転案内を作成し、周知します。移転先の選定から関係各所へのオフィス移転連絡までを手順ごとに分け、期日の目安や実施内容を記載しましょう。
メールやチャットのメッセージでは見落としてしまう可能性が高く、それだけで済ませてしまうと、引越しは面倒くさいという負のイメージを与えてしまいます。そのため、メールやチャットツールによる共有だけでなく、説明会を設けるとより浸透しやすくなります。社員みんなで参加して取り組んでいるという意識をつけることで、社員のモチベーションも上がるでしょう。
また、不明点をその場で質問してもらうことで、記載内容の不足も見つけやすくなると同時に課題も見えるようになり一石二鳥です。プロジェクトのブラッシュアップもしやすいでしょう。
STEP4:委託先を選定する
新オフィスのレイアウトデザイン決めや原状回復工事・入居工事には、専門性の高い知識と経験者が必要です。働きやすさを向上させるための動線やコミュニケーションが取りやすいオフィスレイアウトは、移転の目的や従業員数、オフィスの形状などにより異なりますので、依頼する先は慎重に選びましょう。
オフィス移転を業者に頼むメリットや選び方についてはこちらで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
STEP5:オフィス移転プロジェクトを実行する
いよいよ、実際にオフィス移転を実施します。この段階では下記などを行います。
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移転先のオフィスレイアウト、オフィスデザイン
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移転先で必要になるオフィス家具・OA機器の手配
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引越し・内装、電気、設備、セキュリティ、電話やネットワークの配線の工事の手配
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関係各所(金融機関や取引先)へのオフィス移転連絡
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プロジェクト予算管理
各部門において移転先に持っていくものをリストアップし、旧オフィスに残すもの・廃棄するもの・新規購入するものを明確にします。また、資産管理をしている財務部門とも事前にしっかりと協議しましょう。リストを作成しておかないと、移転後に紛失したり、誤って廃棄してしまったりする可能性もあるため注意しましょう。
STEP6:引越し作業を行う
移転先の工事が完了したら、引越しを行っていきます。
パソコンなど情報機器も移動するため、事前にデータのバックアップを済ませておくことで当日はスムーズな作業が行えます。同時に荷物の梱包も当分使わないものから徐々に作業を進めておくのがよいでしょう。
万が一、引越しが予定通りに進まず、オフィスの運用開始が遅れてしまうことがあると、自社へ多大な損害が発生してしまいますので、引越し管理はとても重要です。
移転時には、法務局や税務署、労働基準監督署や年金事務所などへの各種手続きも必要です。電気・ガス・水道・インターネット・電話回線などのライフラインの切り替え、利用している銀行口座やクレジットカードに登録している住所、電話番号や郵便局・配送業者なども変更が必須となるため、最適なタイミングで行うようにしましょう。
オフィス移転で必要な届出や最適なタイミングについては、こちらで解説しています。
インターネットや電話回線の変更についてはこちらで解説していますので、あわせてご覧ください。
オフィス移転ではネットワーク環境構築が必須!トラブルを避けるためには?
オフィス移転で電話を移設するには?流れや費用、ポイントを解説
STEP7:原状回復工事を行う
新オフィスへの移転が済んだら、旧オフィスの原状回復工事を行います。「原状回復工事」とは、借りる前の元の状態に戻すことです。原状回復工事を行う業者はビルによって指定されていることも多いため、決める前に必ず指定の有無を確認しましょう。ビルで撤去しないといけないものなのか、自社で撤去しないといけないものなのか、またはレンタルやリースなど返却しないといけないものがあるかを区分けすることが重要です。ここでミスが起きると、賠償金を支払わなくてはならないケースもあるため注意しましょう。
業者が原状回復工事を行ったあとは、指示通りに工事が完了しているか確認し、現場の確認が終わったら、事前に予告した解約日までに引き渡します。
STEP8:計画の評価を行う
最後に、オフィス移転が無事に完了したら、今回のオフィス移転について評価を行います。移転前にあった問題点の解決度合いや目的の達成度合いを、従業員にアンケートをとり収集するのがよいでしょう。また、手順やかかった費用などをデータにして残しておくことで、次回のオフィス移転計画を立てやすくなります。
当初の想定と異なる費用の発生や、予算を超過した項目がなかったかを振り返り把握しておくことで、コスト面についての評価もできます。準備や管理体制、コストなど、さまざまな観点から評価を行うことが重要です。
オフィス移転時のPM(プロジェクトマネジメント)は業者に委託するのが一般的
オフィス移転時のプロジェクトマネジメントは自社内で行わず、業者に委託するのが一般的です。ここでは、その理由を3つ説明します。
コスト削減につながる
まず、家具の選定や各種工事などで費用を最適化してくれるため、自社ですべてを手配するよりコスト削減につながりやすいという大きなメリットがあります。レイアウト設計や搬入など煩雑な工程を一手に任せることで、無駄のないスケジュールで計画を進められます。それにより、作業コストの軽減も可能になるでしょう。
理想通りのオフィスにできる
社内に移転に関する十分な知識を持つ人材がいない場合、希望通りのオフィスを実現させることは難しいです。そこで、プロの知識をもった外部業者にオフィス移転のプロジェクトマネジメントを委託すれば、専門的なノウハウを駆使し、さまざまな専門業者と調整してくれるため、より希望に近いオフィスを実現できます。
業務負担を軽減できる
外部業者に上記のようなさまざまな工程を依頼できれば、社内リソースの削減になり、担当者の業務負担を大幅に減らせます。なかでも全体のスケジューリングや移転先探し、オフィスデザインの考案・決定などは時間がかかりやすいです。
目的やコンセプトに合った物件がすぐに見つかるとは限らず、通常業務を行いながらだと、さらに計画が進まないこともあります。外部業者を利用することで、通常業務に支障をきたすことなくオフィス移転を遂行できるでしょう。
まとめ
オフィスの移転は目的であり、プロジェクトはその手段です。その目的のためにプロジェクトという手段を用い、目標を立てて社員のモチベーションと生産性をあげましょう。プロジェクトの進行を行うためには、プロジェクトマネージャーが必要です。しかし、社内でプロジェクトマネージャーを選ぼうとすると、通常業務以外に大きな負担がかかってしまいます。そこで、オフィス移転では社外にプロジェクトマネジメントを依頼するのが一般的です。
清和ビジネスなら、オフィス移転を一つのプロジェクトとして捉え、計画段階から評価まで一連の工程をマネジメントいたします。
以下のチェックリストやスケジュールは一例ですが、オフィス移転で行うべきことのチェックリストにお役立てください。
こちらではオフィス移転の流れについて解説していますので、あわせてご覧ください。