テクマトリックスが考える「現代のオフィスのカタチ」

テクマトリックスのオフィス移転プロジェクトがスタートしたのは2021年のこと。

新型コロナウイルスが全国に蔓延し始めて1年が過ぎ、社会のあり方や働き方、日常の生活様式の変化が問題視され始めた頃でした。

在宅勤務、リモート勤務が普及し、働き方、オフィスの在り方が変容を強いられる中、それらを模索しながら出来上がったテクマトリックスの新オフィスは様々な示唆に富み、移転プロジェクトからはアフターコロナを生き抜く多くのヒントを読み取ることができます。 今回は同社がオフィス移転プロジェクトで掲げた4つの基本コンセプトから導き出される、「大変革時代を生き抜く叡智」をお伝えしたいと思います。

テクマトリックスについて

テクマトリックスは、ネットワークセキュリティ関連事業、医療画像の管理、お客様相談室などのコンタクトセンター業務支援、自動車などの組み込みソフトウエアの安全・安心支援、スクール・コミュニケーション・プラットフォームなど、幅広いITサービスを提供している会社です。

同社は2022年12月1日、近年開発の著しい品川エリアの大型ビル、品川シーズンテラスのワンフロア、約1,500坪のスペースに新しいオフィスをオープンさせました。 本社機能の移転のみならず、グループ会社の集約も同時におこなった大規模なプロジェクトです。 そしてそれは予測不能な社会に柔軟に対応し、働き方の本質的な意味を考え直す試みとなりました。

テクマトリックスがオフィス移転に際し、求め考えたこと

テクマトリックスは高い生産性を維持しつつ、働き方を含む経営環境の変化に対応するため以下の4項目からなるコンセプトをたてました。

  1. 予測不能社会における「変化への対応力」

  2. 自由の本質的な意味

  3. 再定義されるオフィスの意義

  4. 当事者意識を育むオフィス作りのプロセス

そしてこのコンセプトに従いながらオフィス移転をすること自体が、現在そして未来に起こりうる問題解決への回答となりうると考えたのです。

それではそれぞれのコンセプトについて詳しく見てまいりましょう。

 1.予測不能社会における「変化への対応力」

まずテクマトリックスが考えたのは、コロナウイルスなどの未知の疾病や刻々と変化する経済状況などに対し、どのように対応していくかということです。

そして変化への対応が必要なのはオフィスだけではなく、もちろんそこで働く人、そして会社というシステムの在り方自体にも及びます。

予測不能社会において、働く環境は常に変化し続ける

予測不能な社会において、働く環境は常に変化し続けます。

例えばコロナ禍によってリモートワークが一気に普及したと考えられがちですが、実は以前からこのような変化は起き続けていました。 今回はたまたまコロナウイルスの蔓延がトリガーとなったというだけのことです。

つまり次の変化もいずれそう遠くないうちにやってくるわけで、その対応は予め考えておかなくてはなりません。

変化に対応できるのは「作り込みすぎないオフィス」

働き方を含む経営環境が「連続的に変化」する中では、せっかく変化に対応するオフィスを作り込んでも、また新たな変化が訪れ、それに対応しなければならなくなってしまいます。

そこでテクマトリックスが考えたのは、「作り込みすぎないオフィス」というコンセプトでした。

具体的には、変化を許容する「余白」を大切にし、フレキシブルで可塑性のあるオフィス空間を作るというものです。

この考え方は、自然災害と共存する日本の伝統に通じるものがあり、日本的な美意識が反映されているといえるかもしれません。

そしてこうした連続した変化に対応する「作り込みすぎないオフィス」というコンセプトはオフィスのデザインに活かされています。

コンセプトは「呼吸するオフィス」

新オフィスのデザインを担当されたSURE SiGN Inc. 代表取締役の宮川清志氏は、「例えば配置や機能というものがどんどん変化できるような、そういった柔軟性、拡張性を一つの『呼吸』と捉えています。」と語ります。

また自然素材や呼吸できる素材の採用、植栽や庭などの整備、眺望や採光などもそれぞれをオフィスの呼吸と考え、「呼吸するオフィス」というコンセプトをたてました。

そしてそのコンセプトは、ABWの取り込みやバイオフィリックデザインの取り入れ、オフィス内の落ち着いた色味や造作などを通じて具現化されています。

新オフィスづくりと並行して進んだ働き方改革

テクマトリックスでは新オフィスづくりと並行して、働き方改革も積極的に進めています。

同社コーポレート本部人事部次長 沢口昌裕氏は、改革への取り組みを「終わりのない旅」に例え、コミュニケーションの在り方が変化したという認識を共有することが重要だと語ります。

沢口様 「働いていればコミュニケーションが絶対に発生するわけですが、コロナ禍の中、働き方が大きな変革を余儀なくされ、それにつれてコミュニケーションについても、質や量、方法が劇的に変化しています。 それをまずみんなで認識し、それを共有することが重要です。」

その上で、「上からの発信ではなく、変革し続ける働き方、オフィスという『終わりのない旅』に、皆さんで一緒に出ましょう。」と社内に提案しているとのことでした。

これは4つ目のコンセプトの「当事者意識」にも通じる考え方になります。

2.自由の本質的な意味

テクマトリックス代表取締役社長の由利孝氏は、2つ目のコンセプト「自由の本質的な意味」の追求について、自由と責任は常にセットであること、また自由が招きかねない孤独や孤立を解決するためにはリーダーシップが重要であると語っています。

働く「時間」「場所」の自由と、それに伴う責任

由利社長は 「自由と責任、あるいは権利と義務というのは常にセットだと考えています。 しかし自由な決断をしつつも、それに対して自己責任を取れるということが究極的な人間の可能性であって、それを出社しなさいとか、ルールで縛るということ自体がよろしくない。」 と語っています。

一方の責任については、

由利社長 「管理職だとか権限がある人が責任という話になるけれど、社長には社長の役割があり、部長には部長の役割があって、担当者は担当者の役割があります。それぞれの役割に応じて責任というのは全部伴っているわけで、どれ一つとして責任が伴わない仕事なんてないということです。」 と述べています。

これは自律性を重要視し、社員全員の自由を最大限認める代わりに、責任も社員全員がそれぞれ負うという考え方であり、 「自己裁量が大きくて自分で判断できる組織になったら、一番強いだろうなと思います。」と結んでいます。

自由が招きかねない「孤独」や「孤立」解決のポイントはリーダーシップ

テレワークなどの普及により、働く人は期せずして働く時間と働く場所の選択の自由を手にしました。

しかしその裏で、そういった自由は「孤独」や「孤立」を招く恐れもあります。 その点について由利社長は、 「孤立するリスクだとか、組織に同化、アシミレーションできないような状況だとか、オンボーディングできないような状況というのは当然ながらリスクとしてあります。 そこでそれらを防ぐためにフェース・ツー・フェースの機会をどういうタイミングで、どういう形でデザインするかということがリーダーシップの一側面として重要になってきているのです。」 とし、リーダーの個性によって、チームごとにやり方が変わっても良いと自由を認めつつも、 「ただ、人をバインドできないような状況が生まれるとすれば、それは組織のチームリーダーとしての力量がやや問題がある。」 として、責任の所在も明確にしています。

個々人の自由な選択を広げることが組織全体の生産性を高める

テクマトリックスでは以上のように、以前から与えられた役割とその責任の関係が明確であり、また組織の運営においてリーダーシップを重要視していました。

そのことから、一人一人の自由な選択を広げることこそが、組織全体として生産性を高め、結果として高い成果を生み出すと考えているようです。

3.再定義されるオフィスの意義

3つ目のコンセプトは「再定義されるオフィスの意義」というものです。 以前オフィスは「全員毎日出社」する場所でしたが、コロナ禍以降、その前提が崩れており、オフィスの在り方を再定義する必要性が生まれました。

オフィスを「集まることで力が発揮される局面で使用する場所」と再定義

由利社長は、 「例えばZoomの会議は、一度にしゃべる人は1人しかいなくて、インタラクションとして完全に自然とはいえません。 そこでディスカッションを深めたり、コラボレーションしていく場面ではオフィスのような同一の空間に集まって、リアルな議論をすることが必要だと思います。」

と語り、オフィスを「集まることで力が発揮される局面で使用する場所」と再定義しています。

オフィスに集まることが持つ8つの意義

オフィスに集まることが持つ意義は、以下の8つにまとめることができます。

A:生産性を高める ①集合形式が効果的な仕事の効率的遂行 ②「図書館での勉強」の様により効率的に仕事ができる ③トータルに効率的で充実した時間を過ごせる

B:分散による弊害を解決する ④偶発的な出会いを含むコミュニケーションの増進 ⑤親密さの醸成 ⑥組織を集約して見通しを良くする C:その他 ⑦働き方のショーケース ⑧会社の顔、お客様のお迎え

大きくは【A】の部分の「集まることで生産性を高める」ものと、【B】の部分の「集まることで分散による弊害を解決する」に分かれます。

テクマトリックスでは、「オフィスは集まることで力が発揮される局面で使う場所」と再定義しているため、「集合形式が効果的な仕事の効率的遂行」をオフィスの第一の意義と考えていることになります。

また「偶発的出会いを含むコミュニケーションの増進」や「親密さの醸成」にリーダーシップが重要な役割を果たすと考えていることも同社の特徴です。

在宅勤務orオフィスという物理的な分散と、デジタル化による分散

現在はリモートワークによる在宅勤務とオフィスといった「物理的な分散」と、アフターデジタルなどといわれるデジタル化による分散が進んでおり、以前に比べ会社内、オフィス内の「見通し」が悪くなっています。

そこで可視化、見える化、つまり「組織集約して見通しを良くする」ことが重要視されており、今回の移転プロジェクトにおいてもそれは大きな課題でした。

グループ会社全体を「ワンフロア」に集約!偶発的な出会いを演出する

「私が一番気をつけたところは、とにかくワンフロアにこだわるオフィスを作ることです。」 テクマトリックス コーポレート本部業務支援課課長 佐藤賢二氏はこう語ります。

今回の移転プロジェクトでは、本社オフィスの移転だけではなく、グループ会社の集約も同時におこなわれました。 そのためより一層見通しを良くすることが必要だったわけです。 そしてそのことは偶発的な出会いや、シナジー効果に繋がります。

佐藤氏によると、 「今までのオフィスは数フロアに分かれていたので、なかなかそういうシナジー効果や偶発的な出会いができなかったというところもあったので、とにかくワンフロアにこだわりたいと考えていました。

ただこれだけ1,500坪もあるワンフロアのオフィスを都内で見つけようとしてもなかなかなくて苦労しました。」 とのことでした。

4.当事者意識を育むオフィス作りのプロセス

4つ目のコンセプトは、新しいオフィス作りのプロセスに「社員全員」が参加し、「当事者意識を育む」といったものです。 これはテクマトリックスの個性の表れであり、今回の移転プロジェクトの最大の特徴と言えるかもしれません。

空間的な近さよりも「親密な関係性」が大切

テクマトリックスには同じオフィスにいるという「空間的な近さ」よりも、同じことを成し遂げたという連帯感、「親密な関係性」が大切という考え方があります。

由利社長は、 「空間的に近いところにいれば親密なのかというと、またちょっと違うということもあると思います。 やはり人間とは、あなたの存在が大切なんだっていうことが分かる関係性が親密さだと思うのです。 だからそういう意味で、みんなが集まって、ここに来たいと思うオフィスになっていたらいいと思いますね。」

と語っています。

グループ各社からメンバーを選抜してオフィス作りに参加する

また由利社長は、 「今回のオフィス移転プロジェクトでは、社内のメンバーが選抜で参加して、自分たちでオフィス作りに関わっています。

自分が当事者としてこのオフィスの作り込みに参加するということが、今後オフィスが変わっていく上でも主体性を持って、当事者意識を持って、オフィスや空間を考えられるということになるのだろうと期待しています。」

と語っています。

これは社員全員が自律性を持って思考・判断・行動できる組織が最強であるというテクマトリックスの考え方が、未来に続くオフィス作りに活かされているのではないかと感じました。

まとめ オフィスは予測不能社会を乗り切るための「母船」

未来が不透明な予測不能社会では、変化への柔軟な対応力が求められます。

テクマトリックスの新オフィスは、それを具現化したものといえるでしょう。 社員全員の自由と責任をベースに、リーダーシップがそれを支え、予測不能社会の荒波を乗り切っていく。 これからのオフィスは、そのための母船のような位置づけといえるかもしれません。
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