皆さん、コーヒーはお好きですか?
特に仕事をしていると、無性にコーヒーが飲みたくなることってありませんか?そして、コーヒーを飲むと不思議とスッキリしますよね。
なぜなのかなと思って、調べてみました。
なるほど、ストレスや疲れを感じたとき、仕切り直しにコーヒーが飲みたくなるのは、理にかなっているというわけです。
リサーチしてみると、コーヒーって本当に面白いんです。
コーヒー好きな私は、皆さんとコーヒーのあれこれを共有したくなって、まとめてみることにしました。
仕事とコーヒーの深い関係 ~歴史的にたどってみると~
仕事とコーヒーが結びついたのは、いつ頃からなのでしょうか?
ちょっと歴史的にひも解いてみます。
山羊飼いの少年が口にした赤い木の実
コーヒーはエチオピア原産で、アラビア半島南部では古くから飲まれていました。
あるとき、山羊がコーヒーの赤い実を食べて興奮しているのを目撃したのが、カルディ少年。コーヒーの苗木発見者として伝えられ、日本では輸入食材店の店名にもなっています。
16世紀半ば、オスマン帝国時代のイスタンブールで、シリアから来たアラブ人が世界初のコーヒー店「カフヴェハネ」を開きました。興奮をもたらすコーヒーはお酒と同様に禁止すべきかどうか、イスラム法学者を巻き込んで大論争が続いたともいわれています。
イタリア経由でヨーロッパに広がり、1652年、ロンドンに大人の社交場として「コーヒーハウス」が登場。貿易商がトルコから連れて来た使用人に無料でコーヒーを振る舞わせたのが始まりなのだとか。
情報が集積する「コーヒーハウス」は仕事とコミュニケーションの場
お金を払えば誰でも利用できるコーヒーハウスは、10年ほどの間にロンドンで2000軒を超えました。ここでは、新聞や雑誌を無料で読むことができて、政治について熱い議論が繰り広げられました。
情報が集積するコーヒーハウスからはジャーナリズムが生まれ、また、商取引や株取引がおこなわれるところもありました。大手保険会社のロイズは、船乗りの客が多く船舶情報が集まる「ロイズコーヒーハウス」から始まりました。
このように、コーヒーハウスは昔から、単にコーヒーなる飲み物を味わう場所というよりも、多くの人と会って情報や意見を交換し合う「仕事とコミュニケーションの場」だったようです。
コーヒーハウスは社会階層を問わず「誰でも利用できる」と言いましたが、それは男性に限ったこと。そう、当時は女人禁制だったのです。
男性はコーヒー、女性は紅茶
17世紀の女性たちは、黙っていませんでした。「コーヒーは男たちを無意味なおしゃべりに駆り立てる。しかもそのあと、男たちは静かに眠ってしまう」と抗議しました。
コーヒーハウスに対抗して、紅茶を飲む空間に女性を取り込む新戦略が持ち上がり、1710年代、イギリス初のティーハウス「ゴールデン・ライオンズ」がオープンします。理性重視で殺風景なコーヒーハウスとは対照的に、インテリアに凝り、感性にアピールするおしゃれな雰囲気が特徴的でした。
こうして、「男性はコーヒー、女性は紅茶」というある種のジェンダーイメージが定着します。そして、コーヒーとは異なり、お茶は量り売りで自宅に持ち帰りができるので、労働者階級を含め庶民の生活にじわじわと広がっていきました。
オフィスにカフェスペースを設置する理由
これまでの説明で、「コーヒー=仕事、紅茶=暮らし」といった結びつきがおわかりになったでしょうか?
ところで、働き方改革の推進といった社会背景やテレワークの定着を反映して、これまでただ働く場所であったオフィスのイメージが近年大きく変わってきています。
カフェスペースはオフィスでの「コミュニケーションが生まれる」場
長い時間を過ごすオフィスに、効率性とともに快適性が求められるようになり、注目されているのが、オフィスのカフェスペースです。
以前は外資系企業やIT系ベンチャーなどでよく見られたカフェスペースが現在では急速に一般化しています。
オフィスのカフェスペースは、単なる休憩スペースにとどまりません。
リフレッシュ効果をもたらすように工夫された空間で、居心地の良いソファやベンチ、テーブルを備え、コーヒーなどのドリンクを提供。まるでカフェでくつろいでいる気分になれるように配慮されています。
また、ファミレスのシートのような4人掛け程度の席をカフェスペース周辺に設ける企業も多くみられます。オープンな空間でコーヒーを飲みながらの雑談や、フランクな打合せも行うことができます。
仕事のスペースとは雰囲気の違うリラックスした空間に身を置くことで、仕事以外の話も盛り上がるでしょう。カフェスペースには自然と人が集まり、部署やプロジェクトなどの垣根を越えた交流が期待できます。
「コミュニケーションが生まれやすい空間」としてのカフェスペースは、ロンドンに登場した「コーヒーハウス」とも共通点がありそうです。
活発なコミュニケーションは、企業の活力を生みだす重要な要素。デスクや会議室で頭を抱えていても浮かばない斬新なアイデアが、コーヒーの香りとともに飛び出してくるかもしれません。
コミュニケーションと労働生産性の向上
活発な社内コミュニケーションは労働生産性の向上につながるのでしょうか?ここで、海外の事例を紹介しましょう。
スウェーデンの高い労働生産性
北欧諸国の労働生産性の高さはよく知られていますね。その秘密は「フィーカ(Fika)」にありと言われています。
フィーカは、スウェーデン語で「お茶すること」を意味します。多くの企業では、毎日10時と15時に、15分くらいの「フィーカの時間」が設けられていて、一斉に業務を中断します。
同僚とコーヒーを飲みながら甘いものをつまんでおしゃべりする、いわばコーヒーブレイクですが、そこで生まれるコミュニケーションが重要なのです。
1杯のコーヒーでリラックスして、意見やアイデアを言いやすい環境が生まれる……こうしたリセット習慣で、スウェーデンの高い生産性が保たれていると考えられているようです。
オフィスで美味しいコーヒーを淹れたい
では、オフィスで美味しいコーヒーを淹れるにはどうすれば良いのでしょうか?
ここは、専門家に頼るしかありません。コーヒー好きの私は、一般社団法人日本ハンドドリップ協会の植村隆之介代表理事に教えを乞うことにしました。
「ハンドドリップ」は、水以外何も加えず、マシンも使わず、手の加減を含め技術だけでコーヒーの旨味を引き出していく方法です。「日本料理の出汁をとる技法に共通したところがあります」と、植村さんは言います。
同じコーヒー豆を使っても、技によって1杯のコーヒーの印象を気分や食事に合わせてさまざまに変化させることができるのです。こだわりの多い日本人には、マッチした方法なのかもしれません。
ちなみに、コーヒー界のAppleとも呼ばれるアメリカで大人気のブルーボトルコーヒーの創業者ジェームス・フリーマン氏が訪日した際、ハンドドリップを見て、非常に感動していたそうです。
植村さんのハンドドリップの淹れ方は独特です。
ペーパーフィルターを使いますが、ポットの先から沸かしたお湯を少しずつ点滴します。1分半ほどちょろちょろと点滴しつつ蒸らしながら調整、50ccくらい抽出します。そして、抽出したコーヒーをお湯で4倍くらいに希釈します。分量の目安は、コーヒー豆15グラムでお湯200cc。3分を過ぎると植物由来のえぐみと渋みが出るので、3分以内で淹れることが大切です。
アイス珈琲もやり方は同じ。氷の上に直接注いで、最後にやはり冷水で薄めます。このやり方だと、非常にすっきりした味わいになります。
「ハンドドリップしたコーヒーはクリーンで飲みやすく、コーヒーの美味しさや産地の特性がわかりやすいという特徴があります。自分の好みを見つけて、その日の気分で気軽に楽しんでください。丁寧に、愛情を込めて淹れるのがポイントですよ」と、植村さんはアドバイスしてくれました。
次回は、コーヒーの力をつかった業務効率化、オフィスでできる「コーヒーナップ」についてご紹介いたします。