2021年に50周年という大きな節目を迎えた老舗総合通販ブランド「ディノス」。
ただ同社はその歴史にあぐらをかくことなく、「このままではいけない」「働く環境を変え、社員のマインドを変えて時代の変化に対応する体制を作る」という思いを常に持ち続けていました。
そこでオフィス環境のリニューアルを契機にABWを取り入れ、働き方改革を実践していったのですが、そこには数々の難問が立ちはだかりました。
今回はそれらの課題をどのように調整していったかという経緯をリポートいたします。
自社の働き方に合わせ、ABWも取り入れつつ「落とし所」を探す
ABWというとフリーアドレスという「個」単位で考えがちになりますが、「チーム」で動くという同社の働き方と合わないため、調整が必要となりました。
「フリーアドレス」ではなくチームが集まりやすいレイアウトに落ち着いた
この点は、個で移動し働くフリーアドレスではなく、やはり固定席のほうが良いのではないかという意見もある中、落とし所としてチームで移動しチームが自然と集まりやすいレイアウトに落ち着きました。
結果的に自社で商品開発も行うというクリエイティブな業務に適している形態となり、当初の目的を達成できたのです。
良いもの、良い働き方は残して、変えられる部分を変えていく
きれいにリニューアルされ、ABWが導入された新しいオフィスを見ると、ついつい昔ながらの習慣や古いツールなどを廃止してしまいがちです。
しかしディノスがオフィスのリニューアルで目指したのは社員の働きやすさ、居心地の良さ。
であるならば、新しいオフィスありきで古き良きものを廃し、働きにくくしてしまっては、本末転倒になってしまいます。
例えばホワイトボードで在席が分かる昔ながらのシステムなどは新しいキレイなオフィス環境に合わないという意見もありましたが、他のフロアから来ても在席や行き先がひと目で分かり、使ってみるとやはり便利なのです。
こうして同社が培ってきた良いもの、良い働き方は残し、変えなければならない部分、変えられる部分を変えていくというメリハリの効いたリニューアルとなりました。
社内リニューアルを担当した同社人事・総務本部の薮下さんも、当初はABWを実現しようと理念が先行した部分もあったようですが、やはり実際には社員の皆さんの声を取り入れ、調整を加えていったとのこと。
そしてそれが結果として本人の居心地の合わせて働く場所を選ぶことができる、ディノス流のABWになっていったとのことでした。
最初に着手した18Fのメインフロアは中央にシンボルツリーがそびえ、バイオフィリックデザインを採用した先進的な空間となっています。
カフェスペースやファミレスのようなボックスシートを備えたフロア構成は、今までのオフィス環境からすると、かなり斬新といえるでしょう。
そこで18Fは「ここまでできる」「ここまでやっていいんだ」というショーケースのようなフロアと位置づけることにして、ここで出た意見を参考にしながら、他のフロアのリニューアルを続けていくことにしました。
もちろん事前に社員に対しアンケートを取った上でリニューアルに着手していたのですが、実際にプロジェクトを進めてみるとアンケートでは掴みきれていない細かな課題が見え、やはり調整が必要だったのです。
実際のリニューアルは全フロア一気におこなわれたわけではなく、ワンフロアづつ進められました。
そのため前のフロアで出た意見を次のフロアにフィードバックすることができ、少しづつ改良を重ねながら進めていくことができたことが成功につながったと、薮下さんはおっしゃっていました。
Q.今回のリニューアルだけではなく働き方改革などもおこなっているのでしょうか?
薮下「今回のリニューアルと時を同じくして、社内にダイバーシティ推進部が発足。レイアウト変更だけで働き方改革をしているのではなく、ワーケーションやブレジャー、週休3日制など、社会のトレンドも取り入れています。
というか、社内の働き方改革の大きな流れの中に今回のリニューアルもあったというのが正しい位置づけでしょうか。」
Q.リニューアルの結果課題はどう改善されたのでしょうか?
薮下「それまでは1フロア1事業部、固定された感じの働き方だったんですが、現在では『今日は○階で仕事をしよう』と、仕事の内容や気分によって働く場所を選べるようになりました。
またこれはリニューアルされないフロアの社員へのフォローの意味もあるんです。どうしてもリニューアルしていないフロアの社員は残念に感じてしまうことも多くて・・・。そこで『どのフロアでも自由に仕事をしてください』といってケアしています。
後は段階的にリニューアルしていったので、フロアごとに特色が生まれ、結果的にバラエティに富んだフロア構成となったのが収穫ですかね。」
Q.取引先などのご感想はいかがでしょうか?
薮下「すごく変わった。ギャップがすごい(笑)とか、ここまで変わりますか!と驚かれることが多いですが、非常に好評ですね。
おしゃれな、先進的な空間で羨ましいとのお声もいただきます。」
Q.リニューアルの結果についてどのように感じていらっしゃいますか?
及川「会社の居心地が良いので、テレワークで仕事をこなすことができる日でも、『会社に行ってみようかな』という気持ちになるようなオフィスを目指しました。
今は自分自身がそう感じながら、このオフィスで仕事ができています。」
ディノスらしさとクリエイティビティの両立に成功
14Fのフロアへ案内されると、小上がりにテーブルやソファを配したカフェ的なスペースや、スタンディングで打ち合わせなどができるスペースなど、クリエイティブな作業をこなすのにふさわしい空間がひろがっていました。
このフロアは現時点で一番最後にリニューアルに着手したため最も多くの意見が集約されており、その結果どんな部署、どんな年代の社員にも評判がいいとのこと。
そして2022年秋、2年間にわたるディノスのオフィスリニューアルプロジェクトは一旦完結します。