1970年にフジテレビの番組でスタートした視聴者向けのショッピングコーナーにルーツを持つ老舗総合通販ブランド「ディノス」を運営する株式会社DINOS CORPORATION(以下ディノス)は、2021年に50周年という大きな節目を迎えました。
ただ現在のビルに移転してからも20年以上が過ぎ、通販業界を取り巻く環境も大きく変動していく中、同社には「働く環境はこのままで良いのか?」という思いが常にありました。 それは働く環境を変え、社員のマインドを変えることによって、時代の変化に対応していきたいという思い。
今回はそんな同社がオフィスのリニューアルに際してどんな課題を抱えていたか、またそれをどのように解決していったのかをリポートしてまいります。21年ぶり!初の大改装で古典的オフィス空間から脱却
2020年12月から始まったリニューアルはフロアごと、段階的に進められ、2022年の秋まで続く予定となっています。
元々は旧態依然の典型的・古典的オフィス空間だった。
ディノスの本社は元々旧フジテレビのあった新宿区河田町にあり、そのころは古いビル内に島型にデスクが並び、上座に上長がいる、旧態依然のいわゆる典型的・古典的オフィス空間だったようです。
そのため現在の中野坂上の新築オフィスビルに引っ越しが決まったときは、社員の方全員、大喜びだったと今回リニューアルを担当していた薮下さんはおっしゃっていました。
ただ新オフィスに引っ越してからも典型的・古典的オフィス空間は変わっておらず、また越してきてから21年間基本的にリニューアルをしていなかったため、新しい働き方にはマッチしていませんでした。 ここからはそんなオフィスが抱えていた課題をうかがってまいります
多層階を使用していることによるコミュニケーション不足が課題に
テレビ通販からカタログ通販に進出し、現在ではオンラインショップと事業の柱が増えていったディノス。そのためビル内で増床を繰り返し、現在では全社で9フロアを賃貸しています。
そこで問題となってきたのが多層階を使用していることによるコミュニケーション不足。
フロアごとに社員が固定してしまって交流が減り、自由な発想でクリエイティビティを実現するというディノスの良さが発揮しにくくなってしまっていたのです。 このことがフリーアドレスをベースに、最適な場所で仕事をすることによって生産性を向上させるABW(アクティビティー・ベースド・ワーキング)の導入につながっていきます。人事異動が多く、それに伴う改装でかさむ費用
またディノスは伝統的に人事異動が多く、それに伴う改装が多かったため費用がかさんでいたという問題もありました。 この点でも各人が自由な場所で働くことができるABWを上手に導入できれば、改装を減らすことができるのではないかという狙いがあったのです。
クリエイティブな商品を生むには環境を良くしなければならない
更には様々な商品を取り扱う企業として、クリエイティブな商品を生み出していくには働く環境が大切であるという考えもありました。 このように様々な課題を解決するために改装に踏み切った同社ですが、最終的に決断を後押ししたのは、時代の変化に対応する環境を作るという思いでした。
リニューアルのきっかけは「時代の変化に対応する環境を作る」という思い
ディノスが新オフィスに移転してからの21年、インターネットの普及や通販業界の変革など、同社を取り巻く環境は刻々と変化しています。 そのため同社経営者層には環境も含め、どんどん変わっていって時代の変化に対応していきたいという思いがあったといいます。 社員にしても、商品にしても、新しい視点、斬新な発想が乏しくなってしまっているのではないか。 それを働く環境を変えることで一新させたいと考えたというわけです。
フロアリニューアルの狙いは「社員のマインドを変える」こと
ディノスは通販会社としては草分け的な老舗企業です。 ただこのまま旧態依然としたオフィス環境で仕事をつづけていては、旧態依然とした企業になってしまう。 そこで企業イメージを刷新し、同時に社員のマインドも変えたいと考えたのです。
社員が「会社に来たい!」と思えるような環境づくり
ディノスが理想としたのは自由闊達な議論を交わして濃密なコミュニケーションを取ったり、ふとした雑談の中からアイデアが生まれるような環境です。 そのためには社員が「会社に来たい!」と思えるようでなければなりませんし、そうなるためには居心地の良い、会社に行きたくなるような空間が必要ということになります。 そこで同社が目指したのはとにかく居心地の良いオフィス空間を作ることでした。
目指したのは居心地よい快適なオフィス空間
人間が集中力を保つには、静謐な空間よりも人々の「ざわめき」が耳に入るカフェのような空間が向いているといいます。 そこで同社では、オフィスに自然な生活音が聞こえてくるような、居心地の良い快適な空間にすることを考えました。 具体的には、雑談がしやすいようなテーブル席やボックスシートを用意しつつ、集中して作業に打ち込むことができる席も用意したわけです。 仕事をしつつ、お茶も飲みつつ、「ずっといられる場所」を作る。 議論も、雑談も、仕事も、休憩も、すべてできる、そんな使い勝手の良い、居心地の良いオフィスを実現しようと考えたのです。
流行りのものを積極的に取り入れようという姿勢ではなかった
ただあまり流行りのものを取り入れてしまうと、5年後10年後に陳腐化してしまうという恐れがあります。 そこでディノスが目指したのは普遍的な「居心地の良さ」。 これは同社が提供する商品そのものが、自宅を居心地の良い空間にするものであるのに加え、流行りものよりも、長く使えるものをセレクトしていることにも繋がります。
ABWをベースに進めていったが社風に合わない部分も・・・
コミュニケーションを取りやすく、クリエイティビティが向上する居心地の良い空間を実現したいということで、ABWをベースにオフィスのリニューアルを進めていきました。しかし、そこには多くの難問が立ちはだかりました。
単に杓子定規にABWを導入しても、元々の社風や社内で長時間働く人が多い職場という環境もあって合わない部分も多かったのです。 例えば人事異動に伴う改装費を削減するためにフリーアドレスにしてフロアの効率化を図りたかったのですが、「全員出社でも全員が座れるように」という意向があり、これは実現しませんでした。 またミーティングスペースとして用意した場所を1日中専有されてしまったり、他のフロアから来てパッとスタッフの所在がわからないのは困るといったABWのデメリットが目立ってしまったのです。 そこで効率化というよりも社員が働きやすい、居心地の良い環境を整備する目的に切り替え、自社に合わせて調整を繰り返していきました。後半ではその調整の経緯をご紹介してまいります。
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