働き方改革が進行するなか、フリーアドレス導入を検討している企業の担当者も多いことでしょう。付帯的な計画を立てないまま導入してしまうと、社員の間で不安や戸惑いが広がり、業務進行に支障が出てしまうこともあります。フリーアドレスは組織の特性や業務に必要な面積、出社率などを整理し、計画的に進めていくのがおすすめできます。また、無理なくフリーアドレスが運用できるよう新たなルールを取り決め、徹底していくだけでなく、社員の意識改革を促していくことも大切でしょう。
本稿では、フリーアドレス導入後にありがちなデメリット、解決案をご紹介します。
他の人がどこにいるのかわかりにくい
フリーアドレスを導入すると、自席がなくなり、社員一人一人がパソコンを持って移動することになります。結果、社員がどこにいるのかわからなくなるという問題が発生しがちです。
解決案
解決を目指すため、まずは社員がテレワークしているのか、それとも出社しているのかをはっきりとさせましょう。ICTツールの活用がおすすめです。
例えば、社内チャットツールを活用し、いま誰がどこにいるのかを明確にします。チャットツールはさまざまな種類がありますが、トピック、チーム、プロジェクトなど、テーマごとにチャンネルを設定して会話を集約できます。
同時に、電話で連絡を取り合うなどしてコミュケーションを密に取り合うことも大切だといえるでしょう。
そのほか、「ビーコン」を活用して位置情報を確認するのも有効な手段の一つといえます。ビーコンとは、近距離用の無線通信規格「Bluetooth」の低消費電力規格を活用したシステム。ビーコン端末を身につけた人物が社内に設置したレシーバーに近づくことで信号がやり取りされ、人物の居場所を特定できます。
書類中心の働き方では働きにくい
フリーアドレスでは固定席がないため、資料を置いておくスペースが限られます。書類中心の働き方を変えられないと、社員が書類を持ち歩かなければならず、業務効率が落ちてしまうケースがあるでしょう。
解決案
フリーアドレスの導入にあたって、書類のデジタル化・共有化を検討してはいかがでしょうか。逆の見方をすると、ペーパーレスを進めたいと考えている場合でも、フリーアドレスを導入することで自ずとペーパーレスにつながっていく可能性があるといえます。
毎日のセッティング、片付けが面倒
固定席の場合は片付けを怠っても困るのは自分だけです。しかし、フリーアドレスの場合は次に使う人に迷惑がかかるでしょう。また、業務を進めやすいようにするため、業務前に場所のセッティングも必要になってきますね。
解決案
最小限の装備で社員一人一人が動けるよう、機能が充実したオフィス空間作りを検討してみてはいかがでしょうか。共有する設備や文房具、事務機器などがスムーズに使えるよう管理方法やルールを決め、社内で徹底していくことも大切でしょう。
利用する座席が固定化すると活性化が進まない
フリーアドレスを導入しても、席が固定化してしまうと、期待されるコミュニケーション活性化が滞ってしまうでしょう。
解決案
業務に応じた空間を社員が自主的に選び、活用していくよう意識付けしてみてはいかがでしょうか。社員がどの席に座っているのかを把握できるシステムを導入するなどし、特定の人が特定の場所に座り続ける現象を防ぐための施策が必要となってくるでしょう。
同時に、「一人で集中したいときは在宅」「コミュニケーションをとり、会話からアイディアを見つけたいときは出社」といったように、在宅と出社の特性から柔軟な働き方を認め合っていくことも大切です。
業務上の機密情報が漏洩する恐れがある
フリーアドレス導入により、一人一人の自主性や自由度が高まるといった効果が期待できます。組織の風通しが良くなると同時に、社員の倫理観を高める取り組みも重要となってくるでしょう。
解決案
密情報漏洩を防止・抑制のため、社員の意識改革を促してみてはいかがでしょうか。社員と上長による1on1ミーティングを実施するなどし、コミュニケーションを取りながら情報に対する意識について注意を促していきましょう。セキュリティルーム、個室会議室の整備など、社内レイアウトの工夫も一つの手段といえます。
上司と部下のコミュニケーションの減少
上司を中心とした一つのチームで島を作るような席の形だと、上司と部下のコミュニケーションも自然と生まれるでしょう。しかし、フリーアドレスの場合は、自由に席を選べるため、上司・部下間のコミュニケーションが希薄になってしまうケースがあります。
解決案
テレワークやフリーアドレスの導入に伴い、オフィスの価値が変わりつつあります。コミュニケーションを密にするため、チャットツールを有効に活用し、時間や場所を問わず上司に相談できる環境を作ってみてはいかがでしょうか。
オフィスは人と人が交流し、組織として一体感を感じるところに価値があるといえるでしょう。
資料や事務用品の管理者が必要
事務用品を自分のものとして使用していた固定席と違い、フリーアドレスでは事務用品を共同で使用することになります。また、資料についても自分の席で保管することができなくなり、共有することになります。
解決案
資料や参考文献などをデータ化し、共有するためには一定のルールを設けてみてはいかがでしょうか。事務用品の使用や資料の共有についてルールを定め、ルールがきちんと機能しているかチェックする管理者を置くのも良いでしょう。
自席がないことへの根本的な不満
フリーアドレスに移行する場合、自席がなくなることで不安に感じたり、不満に感じたりする社員もいるでしょう。環境変化には少なからずストレスが伴います。
解決案
社員にフリーアドレスの利点について説明し、納得感を持ってもらいながら働いてもらうことが大切だといえるでしょう。例えば、「気分や用途に応じて働く場所を選べる」など、フリーアドレスのポジティブな面について継続的に社員に伝えてみてはいかがでしょうか。
スペース削減が目的となりただ単に狭い
オフィスのランニングコスト削減のみを目的に、フリーアドレスを導入することはおすすめできないでしょう。「デスクを置かなくていいならばスペースを減らしていいのではないか」と考えた結果、改修前よりオフィスが狭くなってしまう可能性があるためです。
解決案
なぜフリーアドレスを導入するのか目的をはっきりさせてみましょう。フリーアドレスが活用できる社内環境作りのため、しっかり計画していくことが大切です。
席が混んでいるときは狭い、希望の席に座れない
詳細な計画なしにフリーアドレスを導入した結果、「オフィスに社員が多くいる時間帯に席が混んで座れない」といったケースも起こります。オフィスの機能を整えても、使いたいときに使えないのではフリーアドレス導入の意味がないといえるでしょう。
解決案
フリーアドレス導入時は、オフィスの現状の利用状況や出社率などを整理してみてはいかがでしょうか。在籍者に対して余裕のあるレイアウト、運用計画を見出していくことが大切でしょう。
まとめ
オフィスの利用状況を鑑みながら計画的に導入する
フリーアドレス導入時には、現状のオフィスの利用状況について把握しましょう。同時に導入後の展望を具体的に描き、計画的にレイアウトすることが大切だといえます。また、社員のコミュニケーション活性化のために、社内での位置情報が把握できるシステムの導入や、ICTツールなどの導入について検討してみてはいかがでしょうか。
以上のことを踏まえ、計画段階からオフィス環境構築の専門家を交えてフリーアドレス導入に伴う施策について検討すると良いでしょう。
スムーズなフリーアドレス導入につながり、導入後の社内変革にも無理なくつなげられるでしょう。フリーアドレスのデメリットについて把握し、自社に合った対応策を考えていきましょう。