コロナ禍により、オフィスの在り方や働き方について多くの企業が見直す必要に迫られました。見直しの過程で注目されたのが、オフィス内に自席を持たず、働く席が固定されていない「フリーアドレス」です。
フリーアドレスを導入し、全員が快適にオフィスを使うには、社員一人ひとりの「働き方」の変化や工夫、ルールの設定が重要なポイントになるといわれています。今回のhatarakuでは、フリーアドレスのメリットやデメリットについて整理したいと思います。
フリーアドレスにする理由
コロナ禍での緊急事態宣言やまん延防止等重点措置により、多くの企業がテレワークを導入しました。コロナ禍で、なぜフリーアドレスが注目されているのでしょうか。
出社する社員の減少
まずは、出社する社員の人数が減ったことが注目される要因の一つとして挙げられます。
オフィスへの出社とテレワークをハイブリッドとする企業が多く、社員全員分の固定席を確保する必要がなくなりました。結果、フリーアドレスを導入し、余剰スペースをビルへ返却する企業や、空いたスペースに違う役割を与えるためオフィスを改修する企業が増加しました。
社員間コミュニケーションの減少
テレワークによって社員間のコミュニケーションが減ったことも、フリーアドレス導入のきっかけになったといえるでしょう。
テレワーク期間にコミュニケーションの取り方について悩まれた方も多いのではないでしょうか。働く場所を自由に選べるフリーアドレスであれば、部署やチームを問わないコミュニケーション促進が期待でき、イノベーションの機会創出にもつながるといわれています。
新しい働き方に対応したオフィス改革に、各社が取り組んでいます。そのスタートが、フリーアドレスの導入なのではないでしょうか。
フリーアドレスのメリット・デメリット
メリット
フリーアドレスのメリットは下記の7点です。
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業務内容に合わせて働く場所を選べる
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帰宅時に身の回りを片付ける習慣が身に付き、身軽になれる
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プロジェクトごとにメンバーが臨機応変に集まって仕事ができる
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部や課、上司や部下を超えてさまざまな人と出会い、交流する機会が増える
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資料や事務用品が共有化できる
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特定の面積を共有、効率化できる
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組織変更に対応しやすい
フリーアドレス導入により、組織形態は従来から定着しているヒエラルキー型から、より社員の自主性を尊重するネットワーク型に変質していくでしょう。自席がなくなることで部門間、上司と部下の枠を超えたコミュニケーションの活性化が期待できます。部門や島(チームごとに座席を島型に組むオフィスレイアウト)という概念がなくなり、決まったチーム単位ではなく、プロジェクト単位で社員が集まることを促すのです。
結果、枠にとらわれず自由自在に活動する集団へ変化していくことが期待されます。
加えて、人事異動・組織変更によるレイアウト変更・引越しの必要がなくなります。書類、資料をパソコンに取り込むことで、ペーパーレスの促進も期待できるでしょう。
デメリット
フリーアドレスのデメリットとしては、次のことが挙げられます。
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席が固定されていないため、社員がどこにいるかわからない
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書類中心の働き方を変えられず働きにくくなった
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毎日の片付けが面倒
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利用する座席が固定化してしまい活性化が進まない
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業務上の機密情報が漏洩する恐れがある
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上司と部下のコミュニケーションが減少しがち
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資料や事務用品の管理者が必要
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自席がないことへの根本的な不満
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執務デスクの削減によるオフィスレイアウトが単なるスペース削減に留まり、かえって狭くなった
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席が混んでいるときは狭く、希望の席に座れない
既存の組織形態のままフリーアドレスを安易に導入すると、デメリット面が浮き彫りになりがちです。物理的な変更だけでなく、変更によって想定されるデメリットを洗い出し、対応策を検討する必要があります。対応策については新たなルールを作り、徹底させていくことが重要になってくるでしょう。
例えば、社員の居場所を把握するために、チャットツールの導入やスケジュールの共有など所在を確認し易くするといった対応が考えられます。書類の置き所がないため、書類のデジタル化・共有化も有効でしょう。面倒な片づけを解消するためには、社員が最小限の装備で働けるよう空間の機能を充実させることが大切です。自席がないことに対する不満、利用する座席の固定化を回避するためには、業務に応じて場所を選べるよう空間作りに工夫したり、意識そのものを変革させたりする必要があるでしょう。
デメリットを想定したルールづくりを
清和ビジネスがあるお客様に対して実施した「フリーアドレス導入後のオフィスに対する評価」というアンケートによると、フリーアドレス導入により、業務スピード・モチベーションアップの効果が見られました。
実際に、
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「始まる前はどんなものか予想もつかなかったが、踏み込んでみると悪いものではないことがはっきりした」
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「当初は業務がやりづらくなると思っていたが、慣れてくるにつれて非常に効率が良いと感じるようになった」
といった声が挙がりました。
固定席がないことに対しては
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「席に縛られないので業務に集中できる」
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「業務内容によって場所を変えることができ、気分転換にもつながる」
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「他部・課の人たちやコミュニケーションしたい人の近くに座ることができ、動向がわかりやすくなった」
といったように前向きにとらえる声が挙がりました。
徐々に慣れていくことで不安やトラブルが解消され、業務効率向上につながっている様子がうかがえます。
フリーアドレスの在り方は、組織によって多種多様です。組織が部門単位から社員一人一人へ、同質性から多様性へと変化し、個人業務の偏重から創造的な集団業務へと移行していくためです。
以上のことを踏まえ、導入の前提として、自社のオフィス利用の現状や出社率を整理したうえで、最適な広さ、運用について検証してみてはいかがでしょうか。
コストや導入までのスケジュールはもちろんですが、さまざまな導入事例を知ったうえで自社に合った形を模索するのは有効な手段でしょう。フリーアドレス導入後も、よりよいオフィス環境にしていくため、継続して調整する必要もあるでしょう。経験豊富なオフィス環境構築の専門家に相談することが、成功の近道になるといえます。